食品・薬品

安全性研究ニュース

第39号



目次
  1. グルタミン酸ナトリウムが原因と疑われたいわゆる中華料理店症候群とプラセボ対照多施設二重目隠し試験の結果
  2. AhR を介する遺伝子発現誘導の in vivo におけるアンタゴニズム
  3. トウモロコシの食物アレルギーの原因は脂質転送タンパク質である
  4. ラットにおける4‐ノニルフェノールの影響:多世代繁殖試験
  5. 廃棄物焼却施設労働者のダイオキシン曝露
  6. 油症患者におけるダイオキシン汚染度と甲状腺ホルモンおよび免疫反応
  7. アドリア海産食用魚介類の残留有機汚染物 (POP)
  8. 日本人母乳中の有機塩素は低下してきた:大阪府の1972〜1998年にわたる調査
  9. 大気中微粒子の物理化学的特性と毒性
  10. 磁界と発癌の関係 国際的比較
  11. 携帯電話と発癌 ― デンマークの全国調査
  12. 50Hz の電磁場曝露の培養細胞への影響




グルタミン酸ナトリウムが原因と疑われたいわゆる中華料理店症候群とプラセボ対照多施設二重目隠し試験の結果
Review of alleged reaction to monosodium glutamate and outcome of a multicenter double-blind placebo-controlled study

Key Words : グルタミン酸ナトリウム/中華料理店症候群/二重盲検プラセボ対照試験

 本報告ではグルタミン酸ナトリウム (MSG) と中華料理店症候群の因果関係について,多施設プラセボ対照二重目隠し試験を実施し,その結果 MSG のみの大量摂取によっては,対照群に比較して症状が起こったが,起きた反応は弱く不安定で再現性に乏しく,食事と一緒に摂取された MSG では症状が起こらなかったことが報告されている.
 MSG は,調味料として長く使用されており,米国においては食品添加物として「一般に安全と認められる物質 (GRAS)」として扱われている.1968年,中華料理を食べた後,頸部と腕のしびれ,脱力感と動悸が起きる例があることが初めて報告された.MSG はこの症候群の発症の引金になると疑われ,今日でも議論が続いている.多くの症例報告がなされ,記載された症例としては,緊張,疼痛,発汗,顔面紅潮,線維束性攣縮,流涙,失神,眩暈,戦慄発作,知覚異常,不整脈,頻脈に及んでいる.多くの臨床試験がさまざまな規模で行なわれたが,MSG と中華料理店症候群の因果関係についての確証は得られていない.グルタミン化合物から TCA サイクルによってアセチルコリンが生じる可能性が考えられ,アセチルコリンの投与によって中華料理店症候群同様の症状が認められることから,アセチルコリンの過剰が中華料理店症候群の原因とする説もあるが,これは,TCA サイクルの中間物であればいずれの物質にもあてはまる.中華料理店症候群の原因には,食道への刺激やナトリウムの過剰摂取,ビタミンBの不足,ヒスタミン中毒なども考えられている.
 本試験は,1998年に多施設プラセボ対照二重目隠し試験として行なった.被験者は以前,MSG による症状を起こしたことがあると自己申告した130例,試験は4つの投与計画の組み合わせで実施した.
 最初の試験(試験1)では 5g の MSG かプラセボかを2日に分けて交互に投与し,症状を記録した.その結果,対照物質投与時には症例がなく,MSG 投与時には2つ以上の症状が起こった被験者は180例中50例 (38.5%) であった.
 試験2は,試験1で MSG 又はプラセボいずれかに陽性反応を示した被験者86例のうち,69例について検討した. 0,1.25,2.5 あるいは 5g の MSG を含んだ 200 mL の飲み物を日を分けて順不同で飲ませ,症状の再現性を観察した. その結果症状の訴えは,2.5 g 投与時には痒痛感としびれ感のみ,5g 投与時には痒痛感としびれ感,緊張,顔面紅潮,発汗,偏頭痛と頭痛の症状が増加した.69例中 5g 投与時に陽性で,プラセボでは陰性であったのは19例であった.この19例のうち12例について試験3を実施した.
 試験3では 5g の MSG とプラセボを順序を無作為に定めて1日ずつに分けて投与し,これを2セット繰り返した.その結果,2回の試験の両方ともに MSG では症状を示し,プラセボでは示さなかった例は2例に過ぎず,この2例のいずれも,試験1,2での症状と試験3での症状は共通ではなかった.この2例についてさらに 5g の MSG を3回,プラセボを3回,無作為の順番で朝食中に与える試験 (試験4) を実施した結果,両名とも3回の MSG 投与のうち,陽性であったのは1回に過ぎず,かつその症状は前3回の試験とは異なるものであった.
 以上の結果から,MSG のみを大量摂取すると,対照群に比較して多くの症状が起こったものの,起きた反応は弱く,不安定で再現性に乏しかった.また,試験4の結果から,食事と一緒に摂取された MSG では症状が現れないことが明らかになった.

Journal of Nutrition 130 : 1058S-1062S (2000)
Geha RS1, Beiser A2, Ren C1, Patterson R3, Greenberger PA3, Grammer LC3, Ditto AM3, Harris KE3, Shaughnessy MA3, Yarnold PR2, Corren J4, Saxon A4
(1Harvard 大学 小児病院 免疫科, 2Boston 大学 公衆衛生学部 疫学・生物統計学科, Boston, MA, 3Northwestern 大学アレルギー・免疫学科, 一般内科, Chicago, IL, 4California 大学 臨床免疫学・アレルギー部, Los Angels, CA, USA)



AhR を介する遺伝子発現誘導の in vivo におけるアンタゴニズム
In vivo antagonism of AhR-mediated gene induction by 3'-methoxy-4'-nitroflavone in TCDD-responsive IacZ mice

Key Words : AhR/3'-methoxy-4'-nitroflavone/アンタゴニズム/TCDD

 Aryl hydrocarbon receptor (AhR) は bHLH- PAS family に属するタンパク質で,リガンド活性化転写因子のひとつである.AhR に対し最も高い親和性を有するリガンドは TCDD であり,これは,免疫機能,生殖機能,および発生過程に強力な毒性を示す.非結合型 AhR は細胞質中に熱ショックタンパク 90 (hsp90) と結合して存在し,リガンドが結合した AhR は hsp90 から解離して核内に移行し,AhR nuclear translocator (ARNT) とヘテロダイマーを形成して dioxin-responsive elements (DREs) に結合できるようになる.TCDD は AhR に結合することにより細胞や分子レベルでの変化を誘導して細胞の分化や増殖に影響を及ぼすが,その毒性発現メカニズムは未だ完全には解明されていない.一方,AhR はある組織の発生や維持に重要な役割を果たしていることが AhR のノックアウトマウスを使った実験で示された.AhR の内在性リガンドはまだ見つかっていない.多くの研究が AhR アゴニストの同定をめざしているが,部分アゴニストやアンタゴニストを用いた研究も AhR の in vivo における機能解明や内在性リガンドの発見に役立つと考えられる.
 AhR のアンタゴニズムの研究には,DRE 下流にルシフェラーゼをレポーターとして導入した Hepa1c1c7 細胞が用いられ,3'-methyl-4'-nitroflavone (3'M4'NF) は強力なアンタゴニストであることが報告されている.3'M4'NF はリガンドと競合的に AhR に結合し,AhR の hsp90 からの解離を抑えて核への移行を阻害すると考えられている.また,3'M4'NF はマウスにおいて benzo [a] pyrene による代謝酵素の誘導や遺伝毒性を減ずることが報告されていることから,著者らは 3'M4'NF およびβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)をレポーターとした DRE-lacZ 遺伝子導入マウスを用いて in vivo の AhR アンタゴニズムの研究を始めた.
 TCDD 3 _g/kg 以上を腹腔内投与したとき,投与後24時間の遺伝子導入マウスの肺および肝に用量依存的にβ-gal 活性の上昇がみられた.また,TCDD 30 _g/kg 腹腔内投与によりβ-Gal 活性の経時的変化を調べると,投与後8時間で肺に有意なβ-gal 活性の上昇がみられ,肺,肝ともに投与後16〜20時間で活性は最大に達した.3'M4'NF 2 mg/kg を4時間毎(-4,0,4hr)に3回腹腔内投与することにより,TCDD 15 _g/kg 投与で誘導された肺および肝のβ-gal 活性の上昇が抑えられた.3'M4'N の単独投与により若干の CYP1A1 の誘導がみられたものの,3'M4'NF を併用投与することにより TCDD による CYP1A1 の誘導抑制がみられた.3'M4'NF は in vivo において AhR を介する転写活性を阻害することから,このアンタゴニスト投与実験系は AhR の介在する情報伝達機構の解明や AhR の内在性リガンドの同定に有用な手段となると考えられる.

Toxicological Sciences 61 : 256-264 (2001)
Nazarenko DA, Dertinger SD, Gasiewicz TA (Rochester 大学医学部環境医学, Rochester, NY, USA)



トウモロコシの食物アレルギーの原因は脂質転送タンパク質である
The maize major allergen, which is responsible for food-induced allergic reactions, is a lipid transfer protein

Key Words : トウモロコシ/食物アレルギー/脂質転送タンパク質

 穀物はヒトの主な栄養源なので,穀物アレルギーを診断することは重要であるが,穀物が含むアレルゲンに関する情報が不十分なため,その診断は難しい.特にトウモロコシアレルギーの研究報告は少なく,そのアレルゲンに関する情報は皆無である.筆者らはトウモロコシのアレルゲンを特定するとともに,トウモロコシアレルゲンと他の穀物およびモモアレルゲンとの交差性について検討した.
 トウモロコシに食物アレルギーを示す患者22人の血清を用いてトウモロコシ抽出物をイムノブロットしたところ,19人が分子量約 9-kd のタンパク質に,8人が約 16-kd のタンパク質に反応した.他のアレルゲンとの交差性を調べるために,患者血清をプールし,様々な濃度の穀物等の抽出物と反応させたのち,トウモロコシ抽出物に対するイムノブロットを行った.その結果,イネ科の花粉,オオムギ,コムギ抽出物を用いた場合は約 16-kd のバンドが消失し,約 16-kd のタンパク質に対する交差性が示された.コメ抽出物を用いた場合は約 9-kd および約 16-kd を含む全てのバンドが消失し,全てのアレルゲンに対する交差性が示された.また,モモ抽出物では約 9-kd のタンパク質に対する交差性が認められた.
 分子量約 9-kd および約 16-kd のタンパク質のN末端のアミノ酸配列を調べた結果,約 9-kd のタンパク質は脂質転送タンパク質 (LTP) であることが,また,約 16-kd のタンパク質は活性化ハーゲマン因子(XUA)の抑制物質であることが判明した.XUA の抑制物質は,穀物に含まれ,互いに構造の類似性が高く,アレルギー性を有することが知られている.これは,トリプシンとα-アミラーゼのインヒビターの仲間で,イネ科の花粉と交差性を示したことから,花粉アレルギーと穀物アレルギーとの区別を困難にしている原因のひとつと考えられる.LTP はトウモロコシの可溶性タンパク質の4%を占め,熱や酵素に対して極めて安定であることからアレルゲンとなる可能性が高い.また,トウモロコシアレルギーの患者のうち,花粉アレルギーのない患者が全て LTP のみに反応したことから,LTP がトウモロコシの主なアレルゲンであると考えられた.コメとオオムギ,コムギでトウモロコシ LTP に対する交差性に差が生じた原因としては,トウモロコシ LTP に対するコメ LTP のアミノ酸配列の相同性が79%であったのに対し,オオムギ,コムギ LTP の相同性はそれぞれ59%,57%とコメのそれに比べて低いことによると考えられた.また,トウモロコシ LTP に対して交差性を示したモモの LTP とのアミノ酸配列の相同性は63%であった.

Journal of Allergy Clinical Immunology 106 (4) : 744-751 (2000)
Pastorello EA1, Farioli L2, Pravettoni V1, Ispano M3, Scibola E1, Trambaioli C1, Giuffrida MG4, Ansaloni R3, Godovac-Zimmermann J5, Conti A4, Fortunato D4, Ortolani C3
(1Ospedale Maggiore IRCCS, 3rd Division of General Medicine, アレルギーセンター, 2ICP, CEMOC, UOOML, Milan, 3Niguarda Ca' Granda 病院, Bizzozzero Division, Milan, 4The National Research Council, Torino, Italy; 5University-College, The Centre for Molecular Medicine, London, UK)



ラットにおける4‐ノニルフェノールの影響:多世代繁殖試験
The effects of 4-nonylphenol in rats: A multigeneration reproduction study

Key Words : アルキルフェノール/妊娠期曝露/多世代試験/生殖試験/ノニルフェノールエトキシレート

 アルキルフェノールエトキシレートの分解産物であるアルキルフェノールは界面活性剤として広く使われている.アルキルフェノールは in vitro 試験で弱いエストロゲン作用を示すが,哺乳動物におけるデータはほとんどない.そこで,4‐ノニルフェノール (NP) の多世代繁殖試験を実施した.各群雌雄30組の Crl-CD ラットの親世代(F0)から第4世代 (F3) まで,200,650,2,000 ppm (それぞれ,9〜35,30〜100,100〜350 mg/kg/day に相当) の濃度の NP を混餌投与した.F0 世代の雌は3週間性周期を観察した後,交配した.F0 雌雄動物は,F1 産児の離乳後に解剖した.その際,精子検査を行い,器官重量を測定した.F1 産児は,泌尿生殖隆起間距離 (AGD),体重を測定した.生後21日に各腹雌雄各1匹を解剖し,器官重量を測定した.また,1腹につき雌雄各1匹を交配用(F1 動物)として選択し,雌は腟開口,雄は精巣下降と包皮分離の時期を検査した.以降,F2 世代まで F0 動物と同様の検査を行った.F3 動物は,生後55〜58日に解剖した.
 その結果,F0 動物では,雄の腎臓の相対重量が 650 および 2,000 ppm 投与群で増加し,NP 各投与群で腎臓の障害 (腎重量増加,軽度石灰沈着,尿細管変性) が認められた.F1 動物では,650 および 2,000 ppm 投与群において生後21日の腟/子宮重量の増加,腟開口の早期化が,2,000 ppm 投与群では体重の低値,性周期の延長,包皮分離の遅延,尿細管の拡張に関連して腎臓の相対重量の増加が認められた.F2 動物では,650 および 2,000 ppm 投与群において腟開口の早期化,腎臓の相対重量の増加が認められた.2,000 ppm 投与群では性周期が延長した.精子濃度は,650 および 2,000 ppm 投与群で減少した.精子形態異常の発現頻度は NP 各投与群で増加した.F3 動物では,650 および 2,000 ppm 投与群で腟開口の早期化が認められた.雄では NP 投与群において腎臓の障害の発現頻度が高値を示したが,程度としては極軽度〜軽度であった.
 以上のことから,NP は雌ラットに対して,子宮重量の増加,腟開口の早期化,性周期の延長等のエストロゲン活性を示すことが示唆されたが,雄ラットには生殖に関する指標に明瞭な変化は認められなかった.また,雌雄の腎臓に影響が認められた.これらのことから,NP の 2,000 ppm 投与では生殖発生毒性学的な影響があると考えられるが,200 ppm では,雌雄の生殖器系に対する影響よりも腎臓に対する影響が大きいものと考えられた.したがって,NP の生殖機能に対する無毒性量は,200 ppm であると考えられる.

Toxicological Sciences 52 : 80-91 (1999)
Chapin RE1, Delaney J2, Wang Y3, Lanning L2, Davis B1, Collins B1, Mintz N4, Wolfe G3
(1国立環境衛生科学研究所 (NIEHS), Research Triangle Park, NC, 2Pathology Associates International, Frederick, MD, 3R.O.W. Siences, Gaithersburg, MD, 4Analytical Siences, Inc., Durham, NC, USA)



廃棄物焼却施設労働者のダイオキシン曝露
Estimation of dioxin exposure concentrations and dioxin intakes of workers at continuously burning municipal waste incinerators

Key Words : ダイオキシン/廃棄物焼却施設労働者/塵埃曝露/ダイオキシン摂取量

 ダイオキシンは主に有機塩素系除草剤の製造,製紙・パルプの脱色や廃棄物焼却に伴って発生し,環境や食物を既に汚染している.日本では,ほとんどの固型廃棄物は有害化学物質発生の防止措置をとらずに市営の焼却炉で処理されていることから,ダイオキシンの主発生源は廃棄物焼却施設であり,廃棄物焼却施設労働者や近隣住人の健康への悪影響が懸念されている.
 この研究では廃棄物焼却施設労働者のダイオキシン曝露レベルを調べるため,有害微粒子を除くためのフィルターまたは静電気による除去装置(EP)付のストカー型連続燃焼炉を備えた市営の3施設を対象とし,作業領域の塵埃濃度および飛灰・スラグ・堆積塵中のダイオキシン濃度をそれぞれガラス繊維フィルター捕集法およびガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリーにより測定した.労働者の作業は,廃棄物の搬入,スラグ・飛灰の搬出や機械の操作・監視・保守などの通常業務と3〜4か月毎の燃焼炉内清掃などの定期的保守作業に分けられる.
 通常業務領域の塵埃濃度は 0.11〜1.5 mg/m3,堆積塵埃中のダイオキシン濃度は 1.0〜6.4 ng TEQ/g であった.清掃作業中の塵埃濃度は炉内で 30〜780 mg/m3,EP 内で 51〜2,000 mg/m3,スラグおよび飛灰中のダイオキシン濃度はそれぞれ 0.004〜1.1 ng TEQ/g および 7.3〜64 ng TEQ/g であった.通常業務,炉内および EP 内清掃作業中のダイオキシン曝露濃度はそれぞれ 0.5〜7.1 pg TEQ/m3,0.5〜48 pg TEQ/m3 および 370〜9,200 pg TEQ/m3 となり,労働省基準値 (2.5 pg TEQ/m3) の150〜37,000倍であった.
 労働者の体重を 60 kg,呼吸量を 1 m3/h,年間250日の通常勤務,年4回の燃焼炉の清掃作業を行い,通常業務では推積塵を,清掃作業では炉内の飛灰やスラグを吸入し,スラグおよび堆積塵中のダイオキシン濃度をそれぞれ飛灰の1/100および1/10と仮定してダイオキシン曝露量を算出した.ダストマスク (保護係数10) を付けただけでは飛灰中ダイオキシン濃度が 100 ng TEQ/g 以上で耐容1日摂取量(TDI : 4 pg TEQ/kg/d)を超え,エアラインマスク (保護係数1,000) を着用しても飛灰中ダイオキシン濃度が 1,000 ng TEQ/g 以上では TDI を超えることになる.したがって,廃棄物焼却施設労働者の TDI を基準値以下にするにはエアラインマスクなど保護具の着用のほかに,飛灰中のダイオキシン濃度の低減や清掃工程を改善できる燃焼炉の開発が必要となる.

Journal of Occupational Health 43 : 61-69 (2001)
Kumagai S1, Koda S2, Miyakita T3, Yamaguchi H4, Katagi K5, Ueno M6
(1大阪府立公衆衛生研究所 職業衛生部, 2高知医科大学 公衆衛生学教室, 3熊本大学 医学部 衛生学講座, 4熊本労働安全衛生センター, 5兵庫県医療協力会神戸病院, 6自治労安全衛生対策室)



油症患者におけるダイオキシン汚染度と甲状腺ホルモンおよび免疫反応
Effects of contamination level of dioxins and related chemicals on thyroid hormone and immune response systems in patients with "Yusho"

Key Words : PCDD/PCDF/Coplanar PCB/油症/甲状腺活動調節/免疫反応

 ポリ塩化ビフェニール (PCB),ポリ塩化ジベンゾフラン (PCDF) の混入した米ぬか油の食用による「油症」の発生から30年を経過したが,なおこれら患者の血中ポリ塩化ジベンゾダイオキシン (PCDD),PCDF,Coplanar PCB (Co-PCB) 濃度は,健康日本人の7倍程度となっている.PCDD 類の健康障害のなかで,甲状腺ホルモンに対する影響,さらに免疫系への影響があることが報告されている.油症患者についてそれらの状況を検査した.
 油症患者83名から静脈血を採取した.そのうち16名(男3,女13名)の患者(年齢28〜75歳,平均55歳)について甲状腺ホルモン,およびリンパ球の構成比率を検査した.
 その結果,油症患者の血中ダイオキシン類濃度は,5名で 100 pg TEQ/g-fat (TEQ = 2,3,7,8-TCDD 毒性当量) を下回ったが,他はみな高く,1,000 pg/g-fat を越える者が3名もあった.TEQ 中央値は 222.4 pg/g-fat (27.8 〜1048.5) であった.甲状腺に関するホルモン濃度は T3,T4,TSH いずれも正常範囲で,血液 TEQ 値と相関するものはなかった.リンパ球の分類ごとの数,免疫グロブリン (A,G,M) いずれも異常はなく,リウマチ因子が上昇傾向を示したほかは自己抗体も検出されなかった.

Chemosphere 43 : 1005-1010 (2001)
Nagayama J1, Tsuji H2, Iida T3, Hirakawa H3, Matsueda T3, Ohki M4
(1九州大学保健学部環境保健学教室, 2九州大学医学部第二内科学教室, 3福岡市衛生環境科学研究所, 環境科学課, 4九州大学保健学部医学情報学教室)



アドリア海産食用魚介類の残留有機汚染物 (POP)
PCDDs, PCDFs, PCBs and DDE in edible marine species from the Adriatic Sea

Key Words : PCDD/PCDF/PCB/ダイオキシン/魚肉汚染

 イタリア東海岸アドリア海の食用魚介類の残留有機汚染物質 (POP) すなわち,ポリ塩化ジベンゾ-p-ダイオキシン (PCDD) および ジベンゾフラン (PCDF),PCB,DDT,DDE の測定を行った.PCB 汚染は種によって差があり,脂肪量の多いサバが最高で 94〜177 ng/g fat あった.イタリア東海岸の北方のものが南方より高く,工業地帯付近の海では 287 ng/g のものが採れており,南方の非工業地帯付近の 59 ng/g と対照的であった.
 PCDD,PCDF の汚染は全体として低いが,回遊魚で高く,サバ>ボラ>アンチョビーの順で 0.23〜1.17 pg TEQ/g fat であった.イカ,貝類,ロブスターでは 0.07〜0.25 pg TEQ/g と低かった.
 ダイオキシン類の汚染濃度が低いことは,他の地域の調査とも軌を一にしており,多脂性魚における日本 (1991) の 0.33〜0.87 pg/g,英国 (1990) の 0.6 pg/g 前後,という報告と近い.一方,ドイツ (1989): 34〜43 pg/g,スウェーデン (1989): 1.8〜9.0 pg/g は高い値を報告しており,最近でもオランダ (1999) の 6.65〜11 pg/g という報告がある.

Chemosphere 43 : 601-610 (2001)
Bayarri S1, Baldassarri LT2, Iacovella N2, Ferrara F3, di Domenico A2
(1Zaragosa 大学獣医学部動物生産食物科学教室, Zaragosa, Spain; 2高等衛生研究所比較毒性学・環境毒性学研究室, 3環境衛生学研究室, Rome, Italy)



日本人母乳中の有機塩素は低下してきた : 大阪府の1972〜1998年にわたる調査
Continuous surveillance of organochlorine compounds in human breast milk from 1972 to 1998 in Osaka, Japan

Key Words : β-HCH/DDT/DDE/PCB/経乳汁曝露

 大阪府衛生研究所においては,1972年から産後1〜3カ月の授乳中の母乳を採取して,PCB 等の有機塩素化合物の測定を行っている.対象としたのは初産の授乳婦人である.
 母乳中の有機塩素汚染は年々低下しており,最も高かった1970年代に比べると,最新の測定では,β-HCH は3.8% (6.813 _g/g fat/1974 → 0.209 _g/g fat/1997) に,総 DDT (DDT + DDE) は7.1% (4.001 _g/g fat/1976 → 0.283 _g/g fat/1996) に,PCB は13.2% (1.514 _g/g fat/1974 → 0.200 _g/g fat/1998) に低下した.低下の速度は PCB が最も遅く,半減期が長いことを示している.なお,Coplanar PCB も他の PCB と同様の傾向を示した.ダイオキシンは測定中である.
 母乳摂取量をもとに乳児の有機塩素摂取量を計算すると,PCB は 22.32 _g/kg/day から 0.311 _g/kg/day へと激減し,これは FAO/WHO (1992) による一日許容摂取量 (ADI: 5 _g/kg/day) の446%から6.2%への低下である.同様に,総 DDT (ADI = 5 _g/kg/day) は67.68 (1,354%) から0.234 (4.7%) に,HCH (ADI = 12.5) は60.62 (485%) から0.176 (1.4%) に低下した.
 PCB 汚染と摂取量の減少は世界的な傾向で,スウェーデン,カナダ,ポーランド等の報告にも明らかになっている.

Archives of Environmental Contamination and Toxicology 40 : 571-578 (2001)
Konishi Y, Kuwabara K, Hori S (大阪府衛生研究所 食品衛生部, 大阪)



大気中微粒子の物理化学的特性と毒性
Particulate matter physicochemistry and toxicology : In search of causality − A critical perspective

Key Words : 大気中微粒子/物理化学的特性/健康影響

 大気中微粒子(PM)濃度と死亡・疾病には統計学的に有意な相関が認められているが,その原因となる PM の特性や傷害発現メカニズムは不明である.本総説はこれらを解明するために PM の毒性に関する研究を総括した.
原因となる特性
(酸性度) 酸性エアロゾル吸入により,健常人および若年喘息患者で気管括約筋の収縮を伴う気道反応の亢進がみられる.硫酸エアロゾルの急性曝露により,健常人の繊毛運動によるクリアランスや動物の気胞マクロファージ機能など肺の防御反応の低下がみられ,また,酸性エアロゾルの動物における慢性曝露では分泌細胞の増加や上皮細胞の剥離など気道の形態的変化がみられる.しかし,PM の酸性度は周囲の空気や呼気中のアンモニアなどにより中和されるため,酸性度そのものが毒性を示すと考えるよりも,酸性度が PM の組成や物理的特性による肺毒性の発現に影響を及ぼす可能性が高い.
(大きさ・表面積・数) PM の大きさ,表面積および数は肺への蓄積,残留および微粒子固有の毒性に影響を及ぼす.実験的に調製した酸化チタンや炭素粉末は,粒子が細かい程,また表面積が大きいほど肺への傷害性が強かった. しかし,大きさによって PM の組成が異なったり,表面積の違いが PM 表面に付着した毒性物質の肺への到達量に影響するなど,まだ不明な点も多く,更なる検討が必要である.
(有機物) ディーゼル排気微粒子(DEP)は発癌性とは関連がなく,急性毒性,アレルギー性炎症および精子形成の低下と関連していた. メタノール抽出後の DEP にはこれらの毒性が発現しないことから,DEP 中の有機化合物に毒性があると考えられている.DEP 中有機化合物に関する in vitro の試験では気胞マクロファージや気道上皮細胞によるサイトカインの産生,エオシン好染球の脱顆粒,ヒトβ細胞による IgE 産生の亢進が示された.また,空気中 PM から抽出された有機化合物は変異原性,遺伝毒性および DNA アダクト形成活性を示した.これらの PM 毒性発現への寄与の程度は不明であるが,PM の健康影響の原因である可能性がある.
(無機物) 燃焼により生ずる金属や大気中で二次的に生成する硫酸塩・硝酸塩・アンモニウム塩などの無機物は PM の実質部分を構成している.メタ重亜硫酸ナトリウムのエアロゾルのイヌへの慢性曝露は気胞マクロファージの防御機構を変化させて肺の糜爛や炎症を誘発し,肺の形態を変化させた.硫酸塩をコーティングした炭素粒子の急性曝露はマウスの気胞マクロファージの貪食能やバクテリア殺作用を低下させた.石炭や油性飛灰(ROFA)中の金属含量は PM と同様に急性肺炎の発症と統計学的に相関し,これら微粒子中の吸収可能な金属が原因であることが示された.また,金属キレーターは ROFA や PM により誘発される生物反応を抑制したことから,金属は PM の関与する健康影響要因の一つであることが示された.
(生物) バクテリアやカビは穀物貯蔵やエアコンの整備不良に関連する疾患など多様なルートでヒトの健康に影響することが知られているが,PM としての量的な因果関係は不明である.都会の大気中 PM にはエンドトキシンが含まれており,ヒトやラットの肺胞マクロファージによる炎症性サイトカインの誘発の原因であることが示されたが,in vivo での急性肺炎発症との関与は否定された.これら in vitro と in vivo の試験結果の相異の原因は不明であるが,特に感受性の高いヒトへのエンドトキシンの作用や PM 生物成分の発生源を調査する必要がある.
傷害発現メカニズム
 金属など PM の構成成分の関与する酸化ストレスの誘導をキレーターが抑制することや,抗酸化剤が PM に起因する in vivo および in vitro の様々の生物応答を阻害することから,PM は酸化ストレスを誘導することで細胞内情報伝達経路を活性化させて核内の転写を亢進し,成長・アポトーシス・炎症・ストレス応答などに関する遺伝子を発現すると考えられている.しかし,起因成分や活性酸素種はまだ同定されていない.また,どのような PM の特性が生体で実際に悪影響を及ぼすかは未解決であり,今後,疾患モデル動物を用いて,病態進行に関与する役割,原因となる病理学的メカニズムや疫学調査で示された影響との関連の程度を精査する必要がある.

Inhalation Toxicology 12 (Suppl. 3) : 45-57 (2000)
Dreher KL (米国環境保護局 肺毒性部門 環境毒性班, Research Triangle Park, NC, USA)



磁界と発癌の関係 国際的比較
Comparative analyses of the studies of magnetic fields and cancer in electric utility workers: studies from France, Canada, and the United States

Key Words : 電磁波/白血病/脳腫瘍

 職業的な電磁波の影響を,発癌とくに脳腫瘍および白血病との関連について調査した研究は多く,あるものは電機関連産業の雇用者についてそうした影響があるという結果を示しているものもある. しかし,これらの研究には「電機産業」そのものや作業内容の定義が不確定で,また電磁波の曝露量の考察が欠けていること,有病者数が少ないことなどの短所がある.対照に選んだ他の事業所に関する情報も一般に少なすぎるきらいがある.
 より厳格な症例対照研究を行った報告も現れた.しかし,それらの研究を並べてみると結果はかなり食い違っており,あるものは白血病と,あるものは脳腫瘍と電磁波曝露が関係があるとし,またあるものはいずれとも関係がないとしている始末である.そこで,これらの調査結果を総合して再分析し,電磁波曝露と腫瘍発生頻度との関係を調べた.
 調査(1)は Sahl ら (1993) が,南カリフォルニアの Edison 社 (SCE) で36,221人について行った,1960〜88年の症例対照調査.調査(2)は Thriault ら (1995) が,フランス電力社 (EdF) の17,000人,オンタリオ水力発電社 (OH) の31,543人およびハイドロケベック社 (HQ) の21,749人について行った,1978〜89年の調査.調査(3)は,Savitz と Loomis (1995) が,米国南東部の5事業所の職員138,905人について行った,1950〜88年の調査である.
 それぞれ結果の数値は一致していなかったが,一応統計学的な変動として説明可能なものである.全体として,白血病や脳腫瘍の頻度が少し多かったがいずれも有意ではなかった.頻度が低い結果もあった.白血病も脳腫瘍もその種類を分けて検討する必要があったが,資料不足で不可能だった.曝露量の推定法は同じではなかった.
 全体を通算した結果,年間 10 _T (T = Tesla) の曝露を受けるとき,脳腫瘍の相対リスクは1.12 (95%信頼範囲: 0.98−1.28),白血病では1.09 (0.98−1.21) となった.結局電磁波曝露の腫瘍誘発性を支持する結果は得られなかった.こうした再分析は有力な研究方法であるとは思われる.しかし,個々の調査の間の相違は単なるばらつきではなくて,実際,集団による差なのかも知れないのであるが,それを打ち消してしまう面もある.

Occupational and Environmental Medicine 56 : 567-574 (1999)
Kheifets LI1, Gilbert ES2, Sussman SS1, Guenel P3, Sahl JD4, Savitz DA5, Theriault G6
(1電力研究所環境部, Palo Alto, CA, 2国立癌研究所, Rockville, MD, 4南カリフォルニア Edison 社, Rosemead, CA, 5North Carolina 大学公衆衛生学部疫学教室, NC, USA; 3INSERM, Paris, France; 6McGill 大学医学部産業衛生学教室, Montreal, Quebec, Canada)



携帯電話と発癌 ― デンマークの全国調査
Cellular telephones and cancer ― a nationwide cohort study in Denmark

Key Words : 携帯電話/電磁波/癌

 携帯電話の使用者が全世界で急速に増加している.携帯電話は,電磁波のマイクロ波領域の 800−2,000 MHz の受信周波数シグナルを使用している.周波数の高いシグナルは十分に強い場合は放射部位に小電流を発生し分子運動を誘発して熱を発生する場合もあるが,通常携帯電話は 0.25 W 程度の出力で作動しており,その接近した部位の脳内温度の上昇は最大 0.1℃と推定され,従って携帯電話は熱による生物反応を起こすことはない.また,このシグナルには分子や原子から電子を離脱させるほどのエネルギーはないので,イオン発生による影響も考えられない.周波数のもっと高いX線やガンマ線のような電離放射線には DNA 傷害作用や遺伝毒性があるが,それらとは性質の大きく異なるものである.
 このように,携帯電話のシグナルが癌を誘発することは考えにくいが,2,450 MHz のラジオ波放射を2時間加えたラットの脳細胞に DNA 傷害を認めたという Lai & Singh (1995) の報告は問題になった.これは追試で確認されておらず,未解決であるが,その他,遺伝子改変マウスに 900 MHz のラジオ波放射を毎日1時間,18か月行ったところ,リンパ腫の発生が増加したという報告がある.しかし,この実験からヒトでの安全性を評価することには,当の実験者である Rapacholi を含めて反対がある.
 この問題に関する疫学調査は,これまで2報ある.1つは米国における25万人以上の携帯電話利用者についての1年限りの調査で,死亡率の差を認めなかったとするもの,1つはスウェーデンにおける調査で,電話を聞く側の脳腫瘍の頻度が高い(有意差なし)と報告しているが,脳腫瘍全体の頻度は高くなっていないという結果である.
 本報告の調査は,こうした一般社会の関心と科学的証拠の不足を背景に行われた.
 全デンマークの1982年から1995年までの携帯電話登録者全員を対象とした.Nordic Mobile Telefon 社のアナログ方式と Global Telecommunication 社のデジタル方式の携帯電話所有者全員について,それぞれ契約日に遡って使用頻度と使用時間をコンピュータ記録に基づいて調査し,総数72万人から個人的情報の十分でない20万人を除外し,中央人口登録簿に登録された国民番号と照合して45万人に絞り,二重登録を整理して,契約後1年以内の使用者と18歳以下のものを除外し,さらにグリーンランド居住者を除いて,最終的に420,095名とした.一方で,デンマーク癌センターで1942年以来全国的に行っている癌登録データから,脳腫瘍を良性腫瘍も含めて拾いだし,組織学的と部位別に分類した.これらを突き合わせると,携帯電話使用者の中に3,391例の癌が認められ,その期待値3,825人との発生頻度の比は 0.89 (95% CI 0.86-0.92) で,統計学的に有意の低下であった.(肺癌の頻度が低かった.) 携帯電話使用者に脳神経腫瘍の増加は認められなかった (期待値との比 0.95; 95% CI 0.81-1.12).接近部位である唾液腺の腫瘍は0.72 (0.29-1.49),白血病も0.97 (0.78-1.49) で,これらの腫瘍の頻度の増加は認められなかった.

Journal of the National Cancer Institute 93 (3) : 203-207 (2001)
Johansen C1, Boice JD2, McLaughlin JK2, Olsen JH1
(1デンマーク対癌協会 癌疫学研究所, Copenhagen, Denmark; 2国際疫学研究所, Rockville, MD 兼 Vanderbilt 大学医療センター内科, Nashville, TN, USA)



50Hz の電磁場曝露の培養細胞への影響
Effects of 50 Hz magnetic field exposure on the rate of RNA synthesis by normal human fibroblasts

Key Words: 電磁場

 電力の送逹・利用に伴って発生する磁場の影響が文明国に遍在する問題になっている.磁場の生物学的影響が住民に及ぶことが懸念され,その根拠として磁力線の細胞機能に対する作用,DNA や RNA などの合成系に影響する可能性が挙げられている.しかし,これまでの実験成績は食い違っていて,合成が刺激されるとも抑制されるとも影響がないとも報告されている.蛋白合成に対する影響の実験も数は少ないが同様である.ショウジョウバエの培養唾液腺細胞を磁場に置いて,放射標識した uridine の取り込み法で調べると mRNA の合成が増加するという報告がある.しかしこの実験では,曝露の用量反応のデータが欠けており,磁場の条件も実際の環境からの曝露とはかけ離れた条件で行われている.とくにその周波数が問題と考えられる.現在欧州で一般に供給されている電力は 50 Hz で,北米では 60 Hz である.哺乳類細胞でそうした条件で調べる必要がある.
 実験を培養ヒト線維芽細胞株 (HF-19) 単層培養で行い,50 Hz の電磁場に置き,磁束密度を 2 _T〜20 mT の間で様々に変えて 3H-uridine の総 RNA および mRNA への取り込みを測定して影響を調べた.その結果,3H-uridine 取り込みは 5 hr まで経時的に増加していくことが確かめられたが,これに対する磁場の影響は認められなかった.
 結論として,この実験条件では,磁場は細胞の転写速度に影響を与えることはなく,従って磁場が細胞活動に影響するとしても,きわめて微少なものと考えられる.

International Journal of Radiation Biology 75 : 647-654 (1999)
Cridland NA, Sabour NR, Saunders RD (国家放射線障害防止委員会, UK)