食品・薬品安全性研究ニュース第51号目次 |
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ロシアの農薬工場におけるダイオキシン被曝と子供の性比 Sex ratios of children of Russian pesticide producers exposed to dioxin
Ufa は, ヨーロッパ東端, ウラル山脈西側のロシア Bashkortostan 共和国にあり, Khimprom と呼ばれる農薬製造プラントが1940年代前半から操業していた. 1961〜1988年に600人以上の労働者が木材防腐剤 2,4,5-trichlorophenol (TrCP) および殺菌剤 hexa-chlorophene や除草剤 2,4,5-trichlorophenoxy acetic acid (2,4,5-T) の中間体を製造していた. また, 250人以上が1964〜1967年の約2年間にわたり 2,4,5-T の生産に従事していた. 労働者の多くは20代前半の青年であったが, 若い女性も 2,4,5-T および TrCP の製造に携わっていた. 2,4,5-T 製造が中止されてから25年後の1992年に血液を採取し, 工場労働者および Ufa 市住民およそ60人の男女・子供を調べた結果, 2,4,5-T の製造に従事していた人の TCDD および PnCDD 被曝は著しく, TCDD の血中濃度は同年代対照群の30倍以上であった. 本研究では血中ダイオキシン濃度のデータを追加し, 調査対象者の勤務歴や出生児数・性などについて, 工場の資料と本人または近親者の供述との照合を行い 2,4,5-T および TrCP 製造労働者の子供の性比について調査した. これら労働者の血中ダイオキシンレベルは, この地方および世界中の通常レベルより1〜2桁高く, ダイオキシン被曝を証拠づけた. 調査対象者の出生男児比は0.40で全世界の0.512とは統計的に差があった. 血中濃度でみたダイオキシン被曝の程度は父母で差がなかったが, 母親の被曝では男児比が0.51と正常であり, 父親の被曝ではこの比が0.38と両者に差が認められた. 大がかりな血中濃度測定と出生児数をまとめた本調査では, Ufa の農薬製造に携わった男性労働者の男児出生率は低下を示した. 出生男児比は全世界で安定して約0.51であり, Ufa および近隣地域の1959〜1996年の値も同様である. 父親の若い時期でのダイオキシン被曝やダイオキシンのアンチアンドロゲン作用による精子運動能の低下などが出生男児比低下の原因と考えられるが, 蓄積性のない塩素化フェノールやフェノール系殺虫剤もこの原因候補であり, 化学物質のヒト生殖に及ぼす影響を理解するにはさらに研究が必要である. Environmental Health Perspectives 110: A699−A701 (2002) Ryan JJ1, Amirova Z2, Carrier G3 (1カナダ保健省 健康食品部, Ottawa, Canada; 2Bashkortostan 環境保護センター, Russia; 3Montreal 大学 環境労働保健, Quebec, Canada) 米国ベビーフードのダイオキシンレベル Dioxins in commercial United States baby food
WHO は, ダイオキシンの許容1日摂取量を体重 1 kg 当り1〜4 pg 毒性等量 (TEQ) としているが, 米国 EPA では 0.1 pg/kg TEQ を参照値としている. 通常, ヒトのダイオキシン摂取は, ほとんどが食物に由来し, 特に肉, 魚, 乳製品の寄与が大きい. 米国の食肉中ダイオキシンレベルは全重量ベースで 28〜540 ppq TEQ との報告があるが, 市販のベビーフードについては報告がなかったことから, 本研究で調査した. Nebraska, California, Georgia, New York, Pennsylvania, Maryland の各州の都市で肉類を含むビン詰めベビーフードを1998年に購入した. これらはチキン, ターキー, ビーフ, ラムおよびハムを含む3社の製品で, 各州から3〜6, 合計24すべてロットの異なるものをプールして測定試料とし, 食物・ヒト組織のダイオキシン分析に関して WHO 認定機関であるドイツ Hamburg の ERGO 試験所において高分解能ガスクロマトグラフィー/高分解能マススペクトロメトリーにより, 7種のポリ塩素化ジベンゾ-p-ジオキシン異性体 (PCDD), 10種のポリ塩素化ジベンゾフラン異性体 (PCDF) および3種のコプラナー PCB 異性体 (co-PCB) を定量した. ベビーフードのダイオキシン TEQ は湿組織重量当り28〜226 ppq (チキン: 77〜226 ppq, ターキー: 102〜124 ppq, ビーフ: 78〜149 ppq, ラム: 28〜30 ppq, ハム: 28 ppq) と大幅な変動があり, ターキー, ビーフ, ラムおよびハムの TEQ に占める co-PCB の割合は PCDD/Fs より大きかった. 予想通り, ダイオキシン濃度と脂肪含量とに正の相関が見られた. このように1998年における米国市販の肉入りベビーフード中ダイオキシンレベルは, 市販の肉類のレベルよりも低かったが存在はしていたので, 幼児への悪影響を懸念される向きもあろう. 米国農業省および Gerber 社の調査によれば, 通常, 1才未満では肉はあまり食べないことが示されているが, 更に大がかりな調査が必要である. Journal of Toxicology and Environmental Health, Part A 65: 1937-1943 (2002) Schecter A1, Wallace D2, Pavuk M1, Piskac A1 , Päpke O3 (1テキサス大学 公衆衛生学部, Dallas, TX, 2消費者組合, NY, USA; 3ERGO 試験所, Hamburg, Germany) メトキシクロルのエストロゲンおよび抗アンドロゲン作用による精子発生への影響 The hidden effect of estrogenic/antiandrogenic methoxychlor on spermatogenesis
メトキシクロル0, 5, 50 あるいは 150 mg/kg/day を出産前後 (妊娠14日目〜哺育17日) の母ラットに毎日, 強制経口投与した. さらに, 産まれた雄の哺育児 (1群あたり14〜16匹) に哺育7〜42日にかけて直接投与し, 哺育152日までに解剖し, 精巣検査を行った. その結果, 各群の体重に差はみられなかった. しかし, 50 および 150 mg/kg 投与群において, 精巣重量および精巣あたりの精子細胞数 (日々の精子形成) は有意に減少し, これらの変化と相関して精巣あたりの Sertoli 細胞数も減少した. さらに, 5および 50 mg/kg 投与群の精子細胞/精祖細胞比は高値を示した. これらの結果は, 生殖機能が未発達な雄へのエストロゲンおよび抗アンドロゲン物質の曝露は, この動物が育成した時の精子形成能力を総体的に低下させるが, 生き残った精祖細胞は多くの精子細胞を形成させることを示している. 各投与群で精巣単位重量あたりの精子細胞数 (生き残った精祖細胞から分裂したもの) の差がみられなかったことは, 精子細胞レベルでは生殖細胞は早期精祖細胞の損失から十分に代償し得たことを示唆している. メトキシクロルは Sertoli 細胞数を減少させ, 精祖細胞/Sertoli 細胞比は減少したが, 精子細胞/Sertoli 細胞比に変化はみられなかった. 精子細胞/Sertoli 細胞比を基準にした場合, Sertoli 細胞の機能に影響は認められなかった結果となるが, 精祖細胞/Sertoli 細胞比を基準にした場合, Sertoli 細胞の機能に影響が認められたことになる. Sertoli 細胞機能の変動が精祖細胞/Sertoli 細胞比減少の原因であるのか, あるいは同比の変動はメトキシクロルが Sertoli 細胞機能に影響することなく, 精祖細胞に直接作用したことを表しているのかは明らかでない. 低および中用量群の精子細胞/精祖細胞比は増加していることから, 生き残った精祖細胞はその残存率の高さからメトキシクロルの毒性を受けていないと思われる. しかし, 高用量群の精子細胞/精祖細胞比は対照群と比較して差はみられなかったことから, この投与量での代償性反応は低下していると考えられた. 以上の結果から, メトキシクロルは恒久的に Sertoli 細胞数, 日々の精子形成および精祖細胞数を減少させる. 生き残った Sertoli 細胞の機能(精子細胞/Sertoli 細胞比を基にした場合)と精祖細胞の機能には高用量群でも毒性変化は観察されなかった. メトキシクロルの主な毒性は Sertoli 細胞数と精祖細胞数に現われる. 用量依存的に Sertoli 細胞数と精巣重量が減少すると同時に精子形成能力も用量依存的に減少する. 結論として, 内分泌攪乱作用が疑われるメトキシクロルの投与により, 精子発生において代償性変化が生じるものの, Sertoli 細胞の減少が精巣あたりの日々の精子形成の回復を妨げており, 繰り返しメトキシクロルに曝露されることにより精巣の代償性能力は低下することが明らかとなった. Toxicology and Applied Pharmacology 180: 129-135 (2002) Staub C1, Hardy VB1, Chapin RE1, Harris MW2, Johnson L1 (1Texas A&M 大学 環境・地方保健センター 動物解剖学・公衆衛生部, College Station, TX, 2米国環境健康科学研究所 環境毒性学プログラム 生殖毒性学グループ, Research Triangle Park, NC, USA) 職業的磁場曝露と心血管死 Occupational magnetic field exposure and cardiovascular mortality in a cohort of electric utility workers
本論文では, 電力会社従業員について以前行った白血病と脳腫瘍の調査 (「食品薬品安全性研究ニュース」 39号に収録) において調査に用いたコホートについて, この関係を調査確認しようとした研究の報告を行っている. これは, 南部カリフォルニアエジソン電力会社の1960年から1992年までの間雇用された男性従業員35,391人で, 前回の調査の際, 電磁波への曝露の程度は個別に算定済みである. この集団の中で発生した407人の AMI 死, 369人の CCHD 死を解析し, 発生の年齢, 時期 (暦年), 社会経済学的状態, 人種, 作業形態等の因子について訂正した上で, 高曝露条件作業歴, 職種について調べると, AMI 死亡の頻度の対照群との比は, 1μT-年あたり, 1.01 (95%信頼範囲0.98〜1.02) であり, CCHD の死亡率比は1.00 (0.99〜1.02) となり, 電磁場曝露の影響は認められなかった. American Journal of Epidemiology 156: 913-918 (2002) Sahl J1, Mezei G2, Kavet R2, McMillan A3, Silvers A4, Sastre A5, Kheifets L2 (1J. Sahl 研究集団, Upland, CA, 2電力研究所 (EPRI), Palo Alto, CA, 3California 大学 San Francisco 癌センター, San Francisco, CA, 4Biotech 研究集団, Palo Alto, CA, 5A.S. Consulting and Research Inc., Overland Park, KS, USA) 出生前薬物曝露を受けた子供の出生から生後の発育 Growth from birth onwards of children prenatally exposed to drugs. A literature review
煙草と生下時体格 1950年代に妊婦の喫煙と出産児体重の関係が報告されて以来, 数十件の調査報告がなされてきた. 妊婦の1日喫煙 (紙巻煙草) 本数と出産児体重, 身長の逆相関関係が確認された. 母親の体格, 年齢等交絡因子を考慮しても, この関係は消失しなかった. 影響の程度は, 1日10本の喫煙で産児体重が平均 112 g, 20本で 226 g 低下する. また, 20本の喫煙で児の身長が 10 mm 短くなるとされた. (別々の調査による.) アルコールと生下時体格 高度の影響である FAS は, 1973年に記載され, 児の成長抑制, 特異な顔貌, 認識力障害の合併が特徴である. FAS は妊娠中高濃度のアルコールに曝露した結果として起こるのが典型的であるが, 中等度の曝露でも, 児の成長に影響が生じることが知られている. 飲酒による低体重児の発生は母親が30歳以上の場合に著しいとも言われている. コカインと生下時体格 コカインについても胎児の成長抑制があるといわれている. 産婦の自己申告に基づいた調査でも, 諸交絡因子の訂正後も関係が認められた. 400例の調査では, コカイン曝露群では, 産児の体重が 93 g, 身長が 7 mm 低かった. これらの薬物の胎児成長への影響の機序には, 母体の低栄養の影響があるかとも考えられるが, 胎盤血流の低下が影響していることも想定される. 煙草と小児期の成長 胎児期の煙草曝露は, 児の生後の成長にも影響を及ぼしているという報告がある. 胎児期曝露群の児は, 6歳の時, 身長が 6 cm,体重が 1 lb 対照群より低かった. 別の調査では, 14歳になっても曝露群は体格が小さく, 23歳での追跡調査でもやはり身長が低いとの報告がある. ただし, こうした体格の変化には諸種の社会的要因が関与しており, そうした交絡因子の除外が完全でない (困難である) という問題はある. アルコールと小児期の成長 上記の喫煙の影響が不確定なのに対して, 胎児期アルコール曝露の影響が小児期の身体発育に影響することは確かなようである. いくつかのコホート調査がある. その一つによると, 胎児期曝露の影響は, 生後18月, 3, 6, 10年後に及ぶことが示されている. たとえば, 中等度飲酒母の子は, 3歳時に背が対照群より 2.3 cm 低く, 10歳時には 2.0 cm 低い. コカインと生後成長 喫煙,飲酒の影響についてよく調べられているのに反し, コカインの影響は十分な調査がない. 少数のコホート調査では, まだ成長への影響が確認されていない. 一部では, 曝露群の子の体重が多いという結果も出ている. 生下時低栄養の代償性かも知れない. Neurotoxicology and Teratology 24: 481-488 (2002) Nordstrom-Klee B1, Delany-Black V1, Covington C2, Ager J3, Sokol R4 (Wayne 州立大学 1医学部 小児科, 2看護学部, 3医学部 健康管理効果研究センター, 4医学部 産婦人科, Detroit, MI, USA) 妊娠期間中の喫煙と小児の肥満 Maternal smoking during pregnancy and childhood obesity
著者らは, 最近, 妊娠中における母親の喫煙と子供の体重超過あるいは肥満との間に統計学的関連性のあることを認めた. そこで, ババリア地区 (ドイツ) の6箇所の保健所が, 1999〜2000年の間に実施した義務教育課程学校への入学時健康診断における質問用紙記入データを解析することにより, 母親の喫煙と小児の肥満との関連性を解析した. 調査対象は年齢が5〜6歳のドイツ人小児で, 体重および身長のデータとともに, 母親の喫煙に関する回答が得られたのは6,483名の児童であった. 体重と身長から体表面積に対する体重を算出して, それが90パーセンタイルを超えた小児を体重超過児とし, 97パーセンタイルを超えた小児を肥満児とした. また, 同じ地区に住む同じ年齢幅の115,530名ドイツ人児童の1997年における健康診断結果を最近のドイツにおける標準値とした. 3,847名の母親は喫煙の経験は全くないと回答し, 638名は妊娠中に喫煙したと回答し, 1,998名は妊娠中には喫煙しなかったと回答した. 小児が妊娠期間中に受けた主要な異物曝露は母親による喫煙であった. 体重超過児と肥満児の発生頻度は, これを百分比で表すと, 次に示す順序で増加した. すなわち, 喫煙の経験が全くない (体重超過:8.1, 95%信頼限界 (CI):7.2-9.0; 肥満児:2.2, 95%CI:1.7-2.7), 1日10本未満 (体重超過:14.1, 95%CI:11.1-17.7; 肥満児:5.7, 95%CI:3.7-8.7), 1日10本以上 (体重超過:17.0, 95%CI:10.1-26.2; 肥満児:8.5, 95%CI:3.7-16.1). 母親の妊娠中における喫煙の交絡因子訂正後のオッズ比は, 体重超過に関しては1.43 (95%CI:1.07-1.90) であり, 肥満に関しては2.06 (95%CI:1.31-3.23) であった. ロジスティック回帰により体重超過あるいは肥満と母親の妊娠中における喫煙には用量相関性が認められた. また, 両親の教育程度, 両親の肥満, 片親, 人口密度, 離乳食の導入時期, 生後1年までの睡眠前における哺乳瓶の使用, 出生時における高体重, 生後1年間における高身長, テレビの視聴時間あるいはビデオゲームで遊ぶ時間, クラブでの通常のスポーツ活動, テレビを見ながらの間食, 主食だけの食事, 現在のカロリー総摂取量, 母乳育児, 夕食における暖かい食事, といった広い範囲の交絡因子からは, 小児の体重超過や肥満を説明できなかった. 従って, ここで認められた小児における体重超過や妊娠中の喫煙による胎児の肥満は, 母親の喫煙に付随した生活様式よりもタバコ曝露によりもたらされたものと考えられる. American Journal of Epidemiology 156: 954-961 (2002) Von Kries R1, Toschke AM1, Koletzko B2, Slikker W, Jr3 (ミュンヘン州立 Ludwig Maximillan 大学, 1社会小児・未成年医学研究部, 2von Haunersches 博士幼児精神科, Munich, Germany; 3FDA, 国立毒性研究センター, 神経毒性学部, Jefferson, AR, USA) 日本のシックビルディング症候群における危険因子としての環境からのタバコの煙曝露と超過勤務 Environmental tobacco smoke exposure and overtime work as risk factors for sick building syndrome in Japan
American Journal of Epidemiology 154: 803-808 (2001) Mizoue T1, Reijula K2, Andersson K3 (1産業医科大学 産業生態科学研究所 臨床疫学教室, 北九州; 2フィンランド産業衛生研究所, Helsinki, Finland; 3Örebro 医療センター病院, Örebro, Sweden) 喫煙制限のない職場における環境タバコ煙:場所と人の曝露に対するモニタリング Environmental tobacco smoke in an unrestricted smoking workplace: area and personal exposure monitoring
調査対象の建物は, 4階建の最新の空調換気システムを備えた建物で, 換気は1時間当り0.6〜0.7回であった. そこには300人が就業し, その内16%の人が喫煙者である. サンプリングは, 29か所の87地点で, 喫煙者のいる場所といない場所, 共用部分 (食堂) 等において6日間連続で実施し, さらにサンプリング装置を装着した非喫煙者24人について1日8時間, 3日間連続のサンプリングを実施した. 分析した項目は, 集塵した空中浮遊粒子, 紫外線吸収粒子, 蛍光発色粒子およびソラネソル, 蒸気に含まれるニコチンおよび 3-ethenyl pyridine であり, 全サンプルについてこれらを分析した. その結果, サンプリングを実施したほとんどの地点においてタバコ煙特有の成分が検出 (コンピュタールームは別系統の空調のため, ニコチンやソラネソル等は検出されていない) され, 当然のことながら喫煙者のいるオフィスや小部屋において最も高い ETS 濃度が検出された. ニコチンの濃度の中央値は, 喫煙者のいる小部屋では 2.53 μg/m3, 喫煙者のいない小部屋では 1.58 μg/m3, 喫煙者のいるオフィスでは 5.5 μg/m3, 喫煙者のいないオフィスでは 0.38 μg/m3 であり, その全ての場所における平均中央値は 1.5 μg/m3 であった. 同じく全ての場所におけるソラネソルの濃度の中央値は 8.2 μg/m3 であった. 一方, 個人の ETS 曝露濃度の中央値は, ニコチンでは 1.24 μg/m3, ソラネソルでは 7.1 μg/m3 であり, 定点サンプリングの値より若干低い値を示した. 個人サンプリングのうち, 喫煙者の近くにいたと申告した人の ETS 濃度はそうでない人と比較してそれぞれの項目で50%程度の上昇が見られたが, ニコチンだけは約2.5倍高い値を示した. また, 各物質の濃度の観察期間中の変動は, 相対標準偏差として20〜60%の間で, ソラネソル以外は50%以内であった. OSHA が示した職場におけるニコチンの平均濃度は2〜10 μg/m3 であるのに対し, 本調査結果におけるニコチンの1日8時間サンプリングの平均濃度の中央値は 1.52 μg/m3 であったように, 今回測定した定点および個人サンプリングの ETS 濃度は, 1994年に OSHA が今回調査したと同様の設備を持つ喫煙制限のない建物内における値として示した数値より低いことが分かった. Journal of Exposure Analysis and Environmental Epidemiology 11: 369-380 (2001) Jenkins RA1, Maskarinec MP1, Counts RW2, Caton JE1, Tomkins BA1, Ilgner RH.1 (Oak Ridge 国立研究所, 1化学分析部門, 2コンピュータおよび統計部門, Oak Ridge, TN, USA) ネコアレルギーと母親の喘息歴との関係素の性特異的発現 Exposure to cat allergen, maternal history of asthma, and wheezing in first 5 years of life
喘息既往歴のある母親を持つ幼児では, 喘鳴とネコの存在との間に有意な関係がみられ, 喘鳴の相対危険度は5歳まで上昇した. 一方, 父親の喘息既往歴には同様の関係はみられなかった. 反対に, 喘息既往歴の無い母親を持つ幼児では, ネコの存在あるいは居住環境の埃に8μg/g 以上の Fel d 1 が含まれている場合に喘鳴の相対危険度が低下し, 1〜5歳の間, この危険度は変動しなかった. 血清総 IgE 濃度の測定結果でも, 喘息既往歴の無い母親を持つ幼児では居住環境中 Fel d 1 が 8 μg/g 以上の場合, 1 μg/g 以下の場合と比較して総 IgE 濃度が低かった. 喘息既往歴の無い母親を持つ幼児におけるネコアレルゲン曝露濃度と血清総 IgE 量との逆相関は, T-helper-2 細胞反応が変化したのか, 気道に対するネコアレルゲンの特異性のためかによって炎症と喘鳴が抑制された結果かもしれない. 一方, 喘息既往歴の有る母親を持つ幼児で, 高濃度のネコアレルゲンに曝露されると, 3歳以降に喘鳴の危険度が上昇したのは, これらの子は早期にネコアレルゲンに感作されており, 3歳以降の再曝露で発症した結果と推測された. なお, イヌアレルゲンあるいはイヌの存在と喘鳴との関係は有意ではなかった. 以上の研究成績の限界は, ネコに対する感作の情報が欠落していること, 両親どちらかにアトピー既往歴のある幼児が調査対象であること, 幼児期には非喘息性の喘鳴も認められること, ネコアレルゲンに曝露された幼児の12.6%が3歳以降に曝露されない環境に変わったことである. 従って, 今回の成績は, ネコに対して幼児期早期に曝露された影響と継続して曝露された影響とが組み合わされたものだろう. しかしながら, 幼児期早期のネコアレルゲン曝露は, 喘息既往歴の無い母親を持つ幼児では5歳までの喘鳴に対する抑止因子となり, 喘息既往歴の有る母親を持つ幼児では3歳以降における喘鳴の危険因子となることが示唆された. Lancet 360: 781-782 (2002) Celedón JC1, Litonjua AA1, Ryan L2, Platts-Mills T3, Weiss ST1, Gold DR1 (1Channing Laboratory, Department of Medicine, Brigham and Women's Hospital, Boston, MA, 2Harvard 公衆衛生学部, 3州立 Virginia 大学 医学部 喘息・アレルギーセンター, Charlottesville, VA, USA) 爆破解体で飛散する真菌除去のための病院内換気システムの能力 The ability of hospital ventilation systems to filter Aspergillus and other fungi following a building implosion
2000年夏, Johns Hopkins 大学病院 (JHH) から約 100 m に位置する22階建てビルの爆破解体が計画された. 爆破解体では莫大な粉塵が発生するため, 病院内の通気処理システムに問題が生じる. JHH の通気処理システムは, 極細ガラス繊維紙製の HEPA フィルターを除いて非繊維系フィルターで構築される. 眼科センターおよび HIV ユニットの外気導入システムには, プレフィルターの後に非 HEPA フィルターが設置され, 除去効率は99%以上である. 同様のシステムが心臓外科 ICU に設備されているが, ICU に到達する前に除去効率99.97%の HEPA フィルター層を通過している. 2棟の腫瘍学センターのうち1棟は1982年建設されたもので, 除去効率99%の2基の非 HEPA フィルターが外気をろ過し, 除去効率99.97%の HEPA フィルターによる再循環システムからの空気と混合して病室へ供給される. 解体期間を通じて, 通気処理システムは通常運転としたが, フィルターへの過負荷防止のため除去効率30%のプレフィルターを増設した. さらに, 古い腫瘍学センターの窓は気密性が検査され, 解体当日には病院内の扉や窓が開放されていないことを確認した. 爆破解体の時刻近くでは, 病院付近の通行が制限され, 扉の開放を最小限にした. エアサンプラーは屋外3か所, 屋内5か所に設置された. 屋外観測点は, 解体現場から約100, 200, 400 m 北に位置している. 屋内観測点は, 爆破解体の現場から近く Aspergillus に対する高リスク群の居住区域から選定した. Aspergillus 属を検出するために使用した単段のインパクターは粒子濃度計と組にされ, 粒径1〜10 μm の粒子濃度がリアルタイムで計測された. その結果, 爆破解体により Aspergillus 属分生子は拡散し, 解体現場から 200 m までの屋外観測点で10倍以上増加したが 400 m では増加しなかった. 本属で確認されたのは A.niger および A.flavus であり, A.niger は78%を占めた. また, 総真菌数は 100 m と 200 m では6倍以上, 400 m では2倍に増加した. 全真菌の95%以上を Penicillium 属と Cladosporium 属が占めた. 屋内測定点での総真菌数は 0〜8 cfu/m3 と低く, Aspergillus 属は1地点で1集落のみ確認されたが, 爆破解体後も増加しなかった. 風の影響があるにせよ, 総真菌数, Aspergillus 属, 粒子数が増加したのは 200 m までの屋外観測点である. また, 粒子濃度が解体前まで低下した後も真菌数は高いレベルに留まることが示された. 以上の点は, 爆破解体に対する病院側の対応を考える際に重要である. 第二に, 病院の通気処理システムには, 院内への分生子, 粒子の侵入を遮断する能力がある. 屋外観測点では総真菌数, Aspergillus 属の集落数そして粒子数の増加があるにもかかわらず, その近くの建物内では増加していない. それらのうちのひとつは HEPA フィルターが装備された建物だが, 他は標準的な通気処理システムである. 爆破解体から3か月間で Aspergillus 属の感染が確認された癌患者の率は変化しなかった. 標準的な通気処理システムは, 分生子を含む粒子を遮断する上で重要な設備であり, HEPA フィルターによるエアシステムでは捕集効率がさらに高まる. 最後に, Aspergillus 属の集落数と粒子数が相関することから, 粉塵粒子のモニタリングは真菌分生子の定性評価法として利用できる. 粒子計測器は操作が容易で運転費用が安価であること, リアルタイムでデータが得られる点で他の方法に比べ有利である. 病院など感受性の高い環境に対する爆破解体などの影響評価法として粒子数計測は極めて有効である. Infection control and hospital epidemiology 23: 520-524 (2002) Srinivasan A1, Beck C2, Buckley T2, Geyh A2, Bova G1, Merz W1, Perl TM1 (1Johns Hopkins 医学研究所, 2Johns Hopkins Bloomberg 公衆衛生部, Baltimore, Meryland,USA) |
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