食品・薬品安全性研究ニュース第52号目次 |
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焼香による環境中ホルムアルデヒドおよび他のカルボニル化合物濃度 Concentrations of formaldehyde and other carbonyls in environments affected by incense burning
空気中のカルボニル類は, O-(2,3,4,5,6-pentafluorobenzyl)-hydroxylamine でコーティングされた Tenax 粒子の固相吸着剤を用い採取した. 調査対象の家では, 祈祷中に長さ 285 mm 直径 3.2 mm の線香を各自3本供え, 線香は約1時間煙を出し続ける. カルボニル類測定試料は, 線香に火がついている最中および燃え尽きた後に採取した. 寺院では, 参拝者が20〜50本の線香を購入し, そのうち3本を本堂に, 残りを境内の香炉に供えることから, 本堂と境内両方から採取した. 採取した試料を熱脱着後, GC/MS 分析した結果, ホルムアルデヒド, アセトアルデヒド, アクロレイン, 2-フルフラール, ベンズアルデヒド, グリオキサル, およびメチルグリオキサルが含まれることが判った. これら7種のカルボニル類の総濃度は, 寺院の本堂で, 参拝者の多い週末に平日の3倍になることから, 濃度と焼香頻度は比例すると推測される. 寺院の本堂と境内の空気中カルボニル類濃度は, 屋外の大気中濃度より一般的に高いが, 時には23倍になることがあった. さらにこれらのことは, 寺院内のカルボニル化合物の発生源が焼香であることを示している. 採取したカルボニル混合物中にホルムアルデヒドが最も多く含まれ, 寺院では54%, 家庭では57%を占めた. また, ホルムアルデヒド含有濃度は, 寺院では 108〜346 ppbv で, 家庭では平均 103 ppbv であり, ピーク時の値は WHO のガイドラインに示された 100 μg m-3 (88 ppbv) を3倍も超えていた. その次に突出して高い値を示したのは, アセトアルデヒドとアクロレインであり, 寺院で採取したサンプル中での割合は, それぞれ13%と12%であった. アセトアルデヒド濃度および家庭内のアクロレイン濃度は, WHO のガイドラインの基準内であったが, 寺院内のアクロレイン含有濃度は, 22〜99 ppbv であり, WHO 基準の 50 μg m-3 (22 ppbv) に近似したまたは超える値であった. これらの結果は, 香を焚くことが周囲環境中のカルボニル類, 特にホルムアルデヒドとアクロレインの濃度を上昇させることを裏付けている. Journal of Environmental Monitoring 4 : 728-733 (2002) Ho SSH, Yu JZ (香港科学技術大学 化学部, 九龍, 香港) 胎児期に植物由来アルカロイドのインドール-3-カルビノール曝露を受けたFischer 344ラット新生児の肝臓にみられる薬物代謝酵素の性特異的発現 Transplacental exposure to indole-3-carbinol induces sex-specific expression of CYP1A1 and CYP1B1 in the liver of Fischer 344 neonatal rats
実験には Fischer 344 系の妊娠ラットを用い, これらの動物に妊娠10日から分娩まで11日間にわたり, 対照の粉末飼料 (AIN93G) あるいは 2,000 ppm の I3C を含む AIN93G を与えて飼育した. 分娩予定日に母動物を観察し, 胎児が娩出されたら直ちに母動物から分離し, 新生児が哺乳しないようにした. 得られた出生児は雌雄を識別し, 二酸化炭素を吸入させて屠殺後, 肝臓を採取した. 母動物も同様に屠殺後, 肝臓の一部を採 取した. これらの肝臓は, 採取後直ちに凍結し, I3C 酸性縮合体の抽出あるいはミクロゾームの抽出に用いた. 分析の結果, 母子いずれの肝臓においても I3C 酸性縮合体が検出され, I3C は胎盤を経由して胎児に移行することが明らかになった. I3C 給餌母ラットの肝臓には CYP1A1 の発現が認められたが, CYP1B1 は発現していなかった. 対照飼料を与えた母動物およびそれらの出生児の肝臓には CYP1A1 および CYP1B1 のいずれも発現していなかった. I3C 給餌ラットの出生児については, これらの酵素タンパクの発現に性差が認められた. すなわち, CYP1A1 は雄の出生児の肝臓においてのみ有意な誘導が認められ, 雌には誘導が認められなかった. 一方, CYP1B1 タンパクは雌の出生児で高レベルの誘導が認められたのに対し, 同腹の雄では検出されなかった. これらのことから, 摂食によって母体内に移行した I3C 酸性縮合体は胎盤を経由して胎児に移行し, 新生児の肝臓に CYP1A1 および CYP1B1 を, 性差をもって特異的に誘導することが示された. さらにこれらの結果は, I3C には胎児が胎盤を介して曝露される種々の環境汚染物質の代謝特性を全体的に変化させる可能性があることを明らかにしたものである. また, 今回の実験モデルにみられた Ah 受容体経由の反応には, 性特異的調節因子が関与している可能性が示された. Toxicological Sciences 64 : 162-168 (2001) Larsen-Su SA, Williams DE (Oregon 州立大学 環境・分子毒性学科および Linus Pauling 研究所, Corvallis, OR, USA) キャベツのインドール化合物とダイオキシンの毒性 Comparison of acute toxicities of indolo[3,2-b]carbazole (ICZ) and 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) in TCDD-sensitive rats
TCDD 感受性の最も高いロングエバンスラット [系統 Turku AB] を用い ICZ の短期反復投与毒性試験を行い, TCDD の毒性と比較を行った. さらに, TCDD と ICZ を併用投与して, ICZ が TCDD の毒性に影響を与えるか否かを観察した結果, 食物中のインドールによる AhR を介した短期全身毒性は認められず, 同時にこれらの化合物による毒性の保護作用を裏づける成績も得られなかったと結論している. TCDD 20 μg/kg を単回腹腔内投与すると, 体重や背部褐色脂肪量の著明な減少とともに胸腺重量の低下が見られたが, 過去の試験では TCDD は1〜5μg/kg で胸腺間質細胞に働いて胸腺の発育分化に障害を起こし, 未分化の胸腺細胞の骨髄から胸腺への移動を阻害することが示されている. 一方, ICZ は 508 μg/kg までの用量を (技術的投与限界量.この量はモル換算で TCDD の LD50 の36倍にあたる), 単回あるいは5回反復皮下投与しても, こうした異常は認められなかった. 本報では AhR 活性化の指標の1つであるチトクローム P450 1A1 (CYP1A1) の増加とともに, CYP1A1 の mRNA の増加ならびに7-エトキシレゾルフィン‐O‐ジエチレース (EROD) 活性の増加も検討している. これらの活性は TCDD 投与群では著明に増加したが, ICZ 投与群での増加は経口投与時にのみ認められている. また, TCDD の毒性の ICZ による低減についても検討したが, この点でも影響は認められなかった. 一方, 酵母再構成システムによれば, ICZ の in vivo でのラット AhR への結合性は, 代表的なモデル物質であるβナフトフラボンと同程度の能力であることが確認されている. 芽キャベツを1日 100 g 食べるヒトが摂取する ICZ の量は 20 ng/kg になる. この摂取量は, 本報告で in vivo の試験においては μg オーダーでの影響が否定されたことから, 成人に毒性を引き起こす量には遠く及ばないと結論できる. 一方, 発生毒性学的には単回投与での毒性発現量は 64 ng/kg であることから, 食物からの摂取量と毒性発現量が成人の場合に比べかなり接近すると考えられる. この点については将来の検討事項として残されている. 以上のように, 食餌中のインドール化合物による AhR を介した短期全身毒性は認められず, 同時にこれらの化合物による毒性の保護作用を裏づける成績も得られなかった. Food and Chemical Toxicology 40: 1023-1032 (2002) Pohjanvirta R1,2,3, Korkalainen M1, McGuire J4, Simanainen U1, Juvonen R5, Tuomisto JT1, Unkila M1,6, Viluksela M1, Bergman J7, Poellinger L4, Tuomisto J1,8 (1フィンランド国立公衆衛生研究所 毒性学研究室, Kuopio, 2フィンランド国立獣医学食品研究所 Kuopio 部, Kuopio, 3Helsinki 大学 獣医学部 食品環境衛生学科, Helsinki, Finland; 4Karolinska 研究所 医学 Nobel 研究所 細胞分子生物学部, Stockholm, Sweden; 5Kuopio 大学 薬学毒性学部, Kuopio, 6Hormas Medical Ltd., Turku, Finland; 7王立テクノロジー研究所 化学部および Novum 生物科学部, Huddinge, Sweden; 8Kuopio 大学 公衆衛生一般医療部, Kuopio, Finland) 低用量経口投与時のビスフェノールAのヒトでの代謝と動態 Metabolism and kinetics of bisphenol A in humans at low doses following oral administration
エストロゲン作用の発現の可否は, 循環系に取り込まれるビスフェノールA量に密接に関わっているので, 今回, ヒトでのビスフェノールAの代謝と血中動態 (トキシコキネティクス) について調べた. 男性3人と女性4人に d16-ビスフェノールA 5 mg (54〜90 μg/kg) を経口投与し, 投与後96時間まで血液と尿を経時的に採取した. (この投与量は, ワインと缶詰食品からの推定摂取量の最悪の例の10倍に当る.) 代謝物の同定には, GC/MS と LC-MS/MS を用い, また, その定量には GC/MS−NCI と LC-MS を用いた. 血液および尿中に確認された代謝物は d16-ビスフェノールAグルクロニドのみであり, 非抱合型のビスフェノールAの血液および尿中レベルはともに検出限界以下であった (血液:10 nM, 尿:6 nM). d16-ビスフェノールAグルクロニドは血液から速やかに消失し, 半減期 (最終相) 6時間以内で尿中に排泄された. 投与した被験物質は, すべて d16-ビスフェノールAグルクロニドとして尿中に回収された. また, 血中の d16-ビスフェノールAグルクロニドの最高濃度 (800 nM) 到達時間は80分であった. ラットでは, 腸肝循環のためビスフェノールAグルクロニドの排泄は緩慢であることが報告されているが, 今回の実験で, ヒトでは腸肝循環が起こらず排泄が速いことが確かめられた. ヒトとラットではビスフェノールAの体内分布に種差があることが示された. 以上の結果から, ヒトではビスフェノールAは体内に吸収された後, ホルモン作用のないグルクロニドに容易に変換して速やかに排泄されることから, エストロゲン作用を有するビスフェノールAの経口投与後の非抱合型のビスフェノールAの体内貯留レベルは極めて少なく, 内分泌撹乱物資としてのリスク評価にあたっては, 齧歯類動物との動態の違いを考慮する必要があると考えられる. Chemical Research in Toxicology 15: 1281-1287 (2002) Völkel W1, Colnot T1,2, Csanády GA3, Filser JG3, Dekant W1 (1Würzburg 大学 毒性学教室, Würzburg, 2Merck KGaA, 毒性学教室, Darmstadt, 3国立環境健康研究センター, GSF-München, 毒性学研究所, Oberschleissheim, Germany) 日本での食品からのPCDDs, PCDFs, およびダイオキシン様PCB摂取量 Update of daily intake of PCDDs, PCDFs, and dioxin-like PCBs from food in Japan
1999年と2000年に日本全国16地域のスーパーマーケットからそれぞれ約100品目の食品を集め,「米・米加工品」や「魚介類」などの14群に分けた. 群ごとに, 混合均一化した後それぞれの試料について合計29種の PCDDs, PCDFs, およびダイオキシン様 PCBs を分析した. その結果, 体重 50 kg の成人の TEQ 1日摂取量推定値は, 分析値が検出限界以下であった異性体をゼロとして計算した場合 (ND = 0), 平均 2.25 pg TEQ/kg/day であり, ND が検出限界値の1/2とした場合 (ND = 1/2 LOD) は, 平均 3.22 pg TEQ/kg/day であった. これらの値は日本の環境庁および厚生省が定めた PCDD/Fs およびダイオキシン様 PCBs の1日耐容摂取量 4 pg TEQ/kg/day 以下であった. ND = 0 および ND = 1/2 LOD いずれの場合も,「魚介類」群の推定値が最も高く (ND = 0: 86.57 pg TEQ/kg b.w./day, ND = 1/2 LOD: 86.95 pg TEQ/kg b.w./day), 次いで「肉類・卵類」群 (ND = 0: 17.48 pg TEQ/kg b.w./day, ND = 1/2 LOD: 18.78 pg TEQ/kg b.w./day) であった. また, TDS の16試料を用い, それぞれの食品群からの1日の平均異性体摂取量を分析すると, 多くの種類の PCDD/Fs やダイオキシン様 PCBs 異性体が,「緑黄色野菜」群,「魚介類」群,「肉類・卵類」群,「乳・乳製品」群,「その他の食品」群で検出された. しかし, それ以外の群では, 数種の異性体しか検出されなかった. 特に毒性の強い異性体の 2,3,7,8-TCDD, 1,2,3,7,8-PeCDD, および 2,3,4,7,8-PeCDF は,「魚介類」群の全ての試料から, また, ダイオキシン様 PCBs の中で最も毒性の強い異性体である 3,3',4,4',5-PeCB は,「魚介類」群および「肉類・卵類」群の全ての試料から見つかった. さらに, 各群での 1,2,3,7,8-PeCDD, 2,3,4,7,8-PeCDF および 3,3',4,4',5-PeCB が総 TEQ レベルに占める割合が大きいことが判り (ND = 0: 71.7%, ND = 1/2 LOD: 63.1%), ダイオキシン様 PCBs (non-ortho および mono-ortho PCBs) の摂取量は, 総 TEQ の約50%にもなった. 本調査では, TEQ 1日摂取量予測値が日本での1日耐容摂取量 4 pg TEQ/kg b.w./day を下回っていたが, 魚介類中心の日本独特の食習慣を考慮すると, 実際のダイオキシン類の摂取量は高い可能性がある. Chemosphere 45: 1129-1137 (2001) Tsutsumi T1, Yanagi T2, Nakamura M2, Kono Y2, Uchibe H2, Iida T3, Hori T3, Nakagawa R3, Tobiish K3, Matsuda R1, Sasaki K1, Toyoda M1 (1国立医薬品食品衛生研究所 食品部, 2日本食品分析センター, 東京, 3福岡県保健環境研究所, 福岡) 芳香族炭化水素レセプターが媒介するベンゼンに誘導される血液毒性 Aryl hydrocarbon receptor mediates benzene-induced hematotoxicity
ここでは,ベンゼンの血液毒性における芳香族炭化水素レセプター (AhR) の関与の有無を, AhR ワイルドタイプ (AhR+/+), ヘテロ (AhR+/-) およびホモ (AhR-/-) の3種類の遺伝子型をもつ雄マウスを用いて調べた. ベンゼンの吸入曝露は, 白血病を誘発する濃度である 300 ppm を1日6時間, 週5日の頻度で2週間行った. その結果, AhR-/- では血液毒性は認められず, 末梢血や骨髄細胞数, 骨髄の顆粒球−マクロファージコロニー形成細胞 (CFU-GM) も変化しなかった. また, AhR+/+ ではベンゼンの吸入に続いて一様におこる p21 の over expression も AhR-/- には見られなかった. ベンゼンの主たる2つの代謝物であるフェノール (PH) とハイドロキノン (HQ) の併合投与では, AhR-/- でも血液毒性が誘導された. 著者らのこれまでの研究からも AhR+/+ はベンゼンに感受性であり, ベンゼンの曝露によって末梢血や骨髄の細胞数や骨髄の CFU-GM が著しく低下して血液毒性を示す. これに対して, AhR-/- ではこれらのマーカーに変化がみられず, ベンゼンの曝露に抵抗性であった. しかし, 前述のように, ベンゼンの代謝産物である PH と HQ の複合投与では, この抵抗性は消失した. 従って, AhR はベンゼンの代謝に機能的な役割を果たしていることが強く示唆された. これまで, ベンゼンが分解されたフェノール性の代謝産物が細胞毒性や遺伝毒性を引き起こすこと, そして肝臓におけるベンゼンの代謝には CYP2E1 が主要な役割をはたしていることが報告されている. ベンゼンの代謝活性が低下している CYP2E1 ノックアウトマウスでは血液毒性は見られないことや, ワイルドタイプマウスではベンゼン曝露後 CYP2E1 の発現が亢進していることは, ベンゼンの代謝と毒性にこの酵素が重要な役割をはたしていることを反映している. 本実験でもベンゼン曝露後の AhR+/+ では肝臓中の CYP2E1 の誘導は亢進していた. しかし, AhR-/- においても CYP2E1 の誘導亢進が認められたことから, CYP2E1 の発現制御への AhR の関与は, 単純ではないと考えられた 本研究は, AhR がベンゼンの毒性発現を仲介してることを示した. これには異物代謝酵素 CYP2E1 の関与がある. Toxicological Sciences 70 : 150-156 (2002) Yoon B-I1 , Hirabayashi Y1, Kawasaki Y1, Kodama Y1, Kaneko T1, Kanno J1, Kim D-Y2, Fujii-Kuriyama Y3, Inoue T1 (1国立医薬品食品衛生研究所 細胞分子毒性部, 東京; 2Seoul 国立大学 獣医学・農業生物工学部 獣医病理学科, Suwon, Republic of Korea; 3東北大学大学院 理学研究科 化学専攻, 仙台) マイコトキシンの食物連鎖 (オクラトキシンAの場合) Mycotoxins in the food chain: the role of ochratoxins
欧州では食品の OTA 汚染が多く, 6,000余りの食物検体の57%が検出限界 (0.01 μg/kg) 以上のレベルで OTA に汚染されていたが, 特に穀類に著明である. しかし, 燕麦, 小麦, 大麦, オート麦, とうもろこし, そばおよびこれらの加工品2,374検体の調査で 3 ppm 以上に達していたのは1.4%のみであった. 穀類とその加工品の残留 OTA は, 欧州の勧告では 5 μg/kg (5 ppb) とされているが, 朝食用シリアルの1例で 31.8 μg/kg というのがあった. 幼児用大豆加工品でも平均的汚染レベルより例外的に高いものがあった. パン類からの OTA 摂取がかなりの部分を占めている. 穀類では保管, 輸送, 製造工程における環境の改善が求められる. コーヒー, ビール, ジュースからの曝露は, 注目されていないが重要である. ドイツの成人では, それぞれ全摂取量の 14.2〜14.5, 7〜9.8, 6.6〜7.5%に相当する OTA 量が摂取されている. コーヒーでも, インスタントはロースト豆より極めて高レベル (最高 9.47 μg/kg) に汚染されている. 紅茶の汚染は認められていない. ドイツのビールは, 70%以上が汚染され, 平均 0.03 μg/L である. 食肉およびその加工品の OTA 汚染は, 飼料から食肉への連鎖という特別な問題をはらんでいる. ブタでは腎臓が最も汚染され (最高 9.33 μg/kg), 肝臓, 筋肉, 脂肪と続き, 血液も相当汚染されており, ソーセージも70%前後が汚染されている. 鳥肉は基本的には汚染されていない. また, 牛肉もルーメン中のミクロフローラにより OTA が完全に分解されるため, 基本的には汚染されていない. ドイツ人の OTA 摂取量は, 28.7〜290.8 ng/day (0.44〜3.6 ng/kg/day) とされ, また, 4〜6歳児では大人の平均の16倍の摂取がみられ, 高リスクグループである. WHO は許容1日摂取量を 5 ng OTA/kg/day と設定した. 腎臓疾患や免疫不全患者の長期的リスクを別にすれば, 現在の汚染レベルは許容値以下であるが, 汚染食物を繰り返し摂取すれば, すぐに許容1日摂取量に達するおそれがある. OTA は, ヒトでは経口摂取後の半減期が840時間と長く, それは腸肝循環および近位尿細管からの再吸収による. ほとんどの食事ごとに, そして, 長期に渡り摂取されることから, IARC では発癌物質グループ 2B (ヒトに発癌性を示すおそれあり) に分類しているが, それは化学発癌では摂取量だけでなく, 絶えざる曝露 (量×期間) が重要視されたことによる. 肝臓から胆汁への排出は, 担体蛋白により調節されている. この担体蛋白は同定されているが, 機序は不明である. 尿中からの吸収にも担体システムが関与している. OTA は, ng/mL という低レベルで免疫システムを抑制する. マウスでは, 5 ng/kg で細胞性免疫に影響が現れ, 液性免疫に対しても抑制作用がある. Livestock Production Science 76: 245-250 (2002) Weidenbach A, Petzinge E (Justus-Liebig 大学 獣医学部 薬理学毒性学教室, Giessen, Germany) 大豆製品のアレルギー性は製品加工の仕方により変わる The allergenicity of soybean-based products is modified by food technologies
本研究では, 9人のアレルギーまたは過敏症患者の血清 (IgE 特異抗体濃度が異なる, 1.2 KU/l〜100 KU/l 以上) を用いて, 大豆原料, 豆乳, 乳児用合成ミルク2種, 特殊加工大豆製品 (ダイズ肉) などさまざまの製品に含まれる大豆タンパクのアレルギー性について比較した. 検査方法としては, 各大豆製品から抽出したタンパク質を SDS-PAGE 電気泳動により分離後, イムノブロッティングによりセルロース膜に移し取り, ペルオキシダーゼ結合抗ヒト IgE 抗体と反応させた. ついで, ルミノール/H2O2 の化学発光により検出, さらにペルオキシダーゼ結合アビジン処理し, 標準品タンパクとの比較により, 分離タンパクの分子量を確認した. その結果, 大豆原料と豆乳の抽出組成タンパク種はかなり異なる (大豆:37kD, 豆乳:33kD が主) が, 9人の患者血清とそれぞれ反応を示し, アレルゲンタンパクは, 24, 33, 37, 49, 71-73 kD であった. 特殊加工大豆タンパク画分には, 大豆原料に含まれる 37kD の, また豆乳に含まれる 33kD のタンパクはみとめられず, 主タンパクは, 31, 34, 38 kD と他のタンパクと組成が異なるが, 38と 50 kD の2種の主アレルゲンタンパクが確認され, 7人の患者血清が反応を示した. 乳児用合成ミルクタンパクでは, 28kD 以下のタンパクが検出されたのみで, いずれの患者血清も反応せず, アレルギー性を有しないことが示された. 以上, 大豆を原料とした製品は加工処理の仕方により, 組成タンパク種やアレルギー性がかなり異なってくることが示され, 特に, 特殊加工することにより, 大豆の主アレルゲンであるGly m Bd 30 が消失していることが明らかになった. したがって, 加工処理法の工夫, 改善により低アレルギー性大豆食品の生産が可能となるであろう. International Archives of Allergy and Immunology 128: 212-219 (2002) Franck P1, Moneret Vautrin DA2, Dousset B1, Kanny G2, Nabet P1, Guénard-Bilbaut L2, Parisot L2 (中央病院, 1生化学試験室, 2内科−臨床免疫・アレルギー科, Nancy, France) 幼児喘鳴の縦断的調査:室内塵エンドトキシン, アレルゲンおよびペットへの曝露の影響 A longitudinal analysis of wheezing in young children: The independent effects of early life exposure to house dust endotoxin, allergens, and pets
両親のいずれかが喘息, 室内塵, ダニ, ゴキブリ, 花粉, 動物, カビ等に対するアレルギー疾患を持つ親から1994〜1996年に生まれた新生児499人の家族から5歳以下の子供226人について, 聞き取り調査と室内塵のサンプリングを行い HDE のレベル等を測定した. 調査は, 初回, その14, 22, 34および46か月後の計5回行った. 調査した家庭の HDE のレベルは, 9.4〜486.0 EU/mg の範囲内にあり, その中央値は 81.3 EU/mg であった. なお, 室内犬がいる家庭の HDE のレベルは 95.8 EU/mg を示し, いない家庭の 77.8 EU/mg と比較して高い値を示したが有意差はなく, 室内ネコがいる家庭といない家庭では 81.28 EU/mg と 79.00 EU/mg でその間に差は認められなかった. HDE のレベルが高い家庭では, 喘鳴を発症する子供の頻度が高かった. HDE のレベルが中央値より低い家庭の幼児では喘鳴の発現率は, 4年間ほぼ一定の割合で経時的変化は認められなかったが, HDE のレベルが高い家庭の幼児では最初は非常に高い発症率を示したものの, その後年を追って減少し, 46か月の時点では HDE が低レベルの家庭の幼児に認められた発現率より低い値を示した (喘鳴の発現率は, 25.2% [初回] が, 20.2% [14か月], 19.3% [22か月], 16.0% [34か月], 12.7% [46か月]). これは, 高濃度の HDE に曝露されると, IFN-γ を産生するT細胞が活性化され, TH-1 細胞の反応が増強される一方で, TH-2 細胞の反応が抑制されることにより喘鳴発症が減少すると考えられた. ダニおよびネコアレルゲンレベルが高いと一時的に喘鳴のリスクが上昇するが, その後そのリスクは減少し, また室内犬がいる家庭の幼児では喘鳴のリスクの減少が認められた. しかし, 最近の報告によれば, ネコのアレルゲンに高濃度で曝露されると TH-2 細胞の反応が変化し免疫寛容が起こるという. 以上のことから, 生後間もない時期の幼児がネコや室内犬と接触することは, 一時的に喘鳴のリスクを高めるものの, その後却ってそのリスクが減少し, 子供の成長に伴って喘鳴の再発を防ぐことが出来ることが示唆された. Journal of Allergy and Clinical Immunology 110: 736-742 (2002) Litonjua AA1-3, Milton DK4, Celedon JC1-3, Ryan L4,5, Weiss ST1,3,4, Gold DR1-4 (1Brigham and Woman's 病院 内科 Channing 研究室, 2Beth Israel 奉仕医療センター, 呼吸器救急治療部, 3Harvard 大学 医学部, 4Harvard 大学 公衆衛生学部, 5Dana-Farber 癌研究所, Boston, MA, USA) 食物アレルギーのモデルとしてのアトピー犬 The atopic dog as a model of peanut and tree nut food allergy
6, 14および26か月齢の時点で, 感作に用いたものと同じ抽出物を皮内に投与して皮膚反応を調べ, 5×5 mm 以上膨疹を起した蛋白含量で比較した. アレルギー惹起能は高い方からピーナッツ, クルミ, ブラジル ナッツ, 小麦, 大豆, 大麦の順であった. 交差反応はナッツ類の間では弱く, 小麦と大麦の間では強く, ナッツ類と大豆の間では明らかではなかった. 1歳の時に採血して, IgE イムノブロッティングを行ったところ, ピーナッツ蛋白に対して, ピーナッツで感作したイヌの血清 IgE は, 分子量約 60 kDa の Ara h 1 および 45 kDa 付近の未知蛋白と結合したほか, 他に弱い結合もみられた. クルミあるいはブラジルナッツで感作したイヌの血清のピーナッツ蛋白に対する結合は, 一貫していないか, あるいは弱いものであった. クルミ蛋白に対して, クルミで感作したイヌの血清 IgE は, Jug r 2 (約 43 kDa) を含む多数の蛋白と結合したが, ヒトにおいて抗原性を示す Jug r 1 (約 7-9 kDa) との結合はみられなかった. ピーナッツで感作したイヌの血清でクルミ蛋白に対して交差反応がみられたが, 当該動物に臨床症状はみられなかった. ブラジルナッツ蛋白に対して, ブラジルナッツで感作したイヌの血清 IgE は, 2S アルブミン (約 7 kDa) を含む複数の蛋白と結合した. ピーナッツあるいはクルミで感作したイヌの血清はブラジルナッツ蛋白と幾つかの交差反応を示したが, 2S アルブミンとの結合はみられず, 45-47 kDa の蛋白との結合は弱かった. イヌ血清 IgE をナッツ類のアレルギー患者のプール血清と比較してみると, クルミ蛋白である Jug r 1 との結合がイヌで欠落していたのを除き, ほとんどの結合は一致した. 2歳半の時点で, 新鮮なナッツ類の粉末を経口投与して臨床症状を観察した (反応が無い場合は3歳半に再度実施した). その結果, ピーナッツで感作したイヌでは, ピーナッツの経口投与により, 全例で嘔吐および嗜眠が観察されたが, クルミあるいはブラジルナッツを経口投与しても臨床症状を起さなかった. クルミで感作したイヌでは, クルミの経口投与により, 全例でチアノーゼ, 嘔吐あるいは下痢といった臨床症状を示し, これらは, エピネフリン, ジフェンヒドラミン, プレドニゾロンの投与および輸液を施したところ症状が回復した. しかし, クルミで感作したイヌは, ピーナッツあるいはブラジルナッツの経口投与に反応しないか, 症状がみられても皮膚反応および IgE イムノブロッティングの結果と一致したものではなかった. ブラジルナッツで感作したイヌでは, ブラジルナッツの経口投与により, 嘔吐等の症状がみられた. しかし, ブラジルナッツで感作したイヌは, ピーナッツあるいはクルミの経口投与に反応しなかった. 以上の結果から, 食物アレルゲンのモデルとして使用したイヌからの知見がヒトの患者と類似していることがわかった. 今回の実験結果から, イヌでは, 複数の抗原で感作でき, その強度を階層化できたこと, IgE 反応が皮膚テストや in vitro 法で検査できること, 抗原性の強度がヒトと類似していたことが判明した. また, イヌは, 内視鏡による消化管粘膜の採取といった処置が可能であること, 免疫療法により繰り返し動物を使用できること, 1匹のイヌを同時に複数の食物で感作できることといった他の動物種には無い長所を有し, コスト高や実験期間が長いという短所を補って余る. イヌは, 食物アレルゲンの研究, 遺伝子組換食品のアレルゲンスクリーニングの試験モデルとして有望である. Journal of Allergy and Clinical Immunology 110: 921-927 (2002) Teuber SS1,2, Del Val G3, Morigasaki S3, Jung HR3, Eisele PH4, Frick OL5, Buchanan BB3 (1California 大学 Davis 校, 医学部 内科学, Davis, 2北 California 退役軍人保健医療機構, Pleasant Hill, 3California 大学 Berkeley 校, 植物・微生物学部, Berkley, 4California 大学 Davis 校, 獣医学部 Animal Resource サービス, Davis, 5California 大学 San Francisco 校, 医学部 小児学科, San Francisco, CA, USA) |
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