食品・薬品安全性研究ニュース第54号目次 |
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大気中の浮遊粒子の吸入は心虚血を悪化する Particulate air pollution and risk of ST-segment depression during repeated submaximal exercise tests among subjects with coronary heart disease: The exposure and risk assessment for fine and ultrafine particles in ambient air (ULTRA) study
被験者はオランダのアムステルダム, ドイツのエルフルトおよびフィンランドのヘルシンキ在住の45人で, 6か月間, 2週毎に自転車エルゴメータによる運動負荷試験を行った. 全342試行中72回で, 負荷により, 虚血性心疾患の指標である 0.1 mV 以上の ST 低下が認められた. このような ST 低下と都市中心部で測定した大気汚染粒子濃度の間には粗大モード粒子を除いて相関が認められた. 相関は負荷試験2日前の蓄積モード粒子濃度との間に最も強く認められ, 特に水平型 ST 低下との相関が明らかだった. また, 超微小モード粒子濃度と ST 節低下の相関に対して, 数日前の気温が影響を与えることが明らかであったが, 直前の気温の変化は影響を与えなかった. 花粉の量, 湿度, 大気圧は相関に多少の影響を与えたが, これらの相関は左脚ブロック, 左心室肥大または前壁外側心筋梗塞を患っている被験者およびジギタリスを服用している被験者を除外した場合に強く認められた. また, 蓄積モード粒子濃度との相関以外の全ての相関は, 女性およびβアドレナリン拮抗薬使用者を除外した場合に強くなる傾向があった. さらに, 過去に心筋梗塞の病歴を持たない女性で超微小モード粒子濃度との相関が強い傾向が認められた. 2因子モデルでは, 超微小モード粒子と微小粒子 (PM2.5) は, 独立して虚血性心疾患患者の ST 節低下を引き起こしたが, それ以外の粒子同士の影響は分けて評価できなかった. これはそれぞれの粒子の発生源が異なるためと考えられた. これらの結果は, 微粒子による大気汚染が心血管系疾患罹患率に及ぼす影響は, 少なくとも部分的には虚血に対する感受性の亢進に因るところがあり, 大気中の微粒子と死亡, もしくは虚血性心疾患に因る死亡の危険性の間には生物学的な関連がありそうだということを示している. Pekkanen J1, Peters A2, Hoek G3, Tiittanen P1, Brunekreef B3, de Hartog J3, Heinrich J2, Ibald-Mulli A2, Kreyling WG4, Lanki T1, Timonen KL1, Vanninen E5 (1 国立公衆衛生研究所, 環境疫学研究班, Kuopio, Finland; 2 GSF 国立環境保健研究センター, 疫学研究所, Neuherberg, Germany; 3 Utrecht 大学 環境職業保健部門, the Netherlands; 4 GSF 国立環境保健研究センター, 吸入生物学研究所, Neuherberg, Germany; 5 Kuopio 大学・Kuopio 大学病院, 臨床生理学および核医学科, Kuopio, Finland) Wistar Kyoto ラットは燃焼由来粒子の吸入により心筋傷害を起こす Inhaled environmental combustion particles cause myocardial injury in the Wistar Kyoto rat
Kodavanti UP1, Moyer CF2, Ledbetter AD1, Schladweiler MC1, Costa DL1, Hauser R3, Christiani DC3, Nyska A4 (1 米国環境保護局 研究開発室, 国立健康環境効果研究所, 実験毒性学部門 肺毒性課, 2 病理連合, NC, 3 Harvard 大学公衆衛生学部, MA, 4 国立環境健康研究所 実験病理研究室, NC, USA) 大気汚染微粒子は酸化的ストレスを生じる Oxidative-stress potency of organic extracts of diesel exhaust and urban fine particles in rat heart microvessel endothelial cells
著者らは以前に OE-DEP に曝露したラットの肺胞内マクロファージで抗酸化酵素の mRNA レベルが選択的に上昇することを報告している. また, ラットで, 濃縮大気粒子への短時間吸入曝露により引き起こされた酸化ストレスに対し, スーパーオキシド消去酵素やカタラーゼ等の抗酸化酵素のレベルが上昇することが報告されている. 本報告で著者らは OE-DEP および OE-UFP の細胞毒性および酸化的ストレスの効力をラット心微小血管内皮細胞 (RHMVE) を用いて調べている. OE-DEP および OE-UFP の50%細胞死を引き起こす濃度 (LC50) は 17 および 34 _g/mL で, OE-DEP が OE-UFP よりも強い細胞毒性を有することが明らかとなった. この細胞毒性は N-アセチル-L-システイン (NAC) の添加により減弱したことから, 酸化的ストレスによるものと推測された. 単層培養 RHMVE に OE-DEP および OE-UFP を加えて6時間後にヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1), チオレドキシンペルオキシダーゼ2, グルタチオン-S-転移酵素P-サブユニット, NADPH 脱水素酵素等の抗酸化酵素の mRNA レベルを測定すると, OE-DEP 添加により用量依存性の上昇が認められた. また, HO-1 の mRNA レベルは OE-DEP 添加により最も著明に上昇した. これら抗酸化酵素および熱ショックたんぱく72 (HSP-72) の mRNA レベルへの影響は OE-UFP と比較して OE-DEP でより顕著であった. OE-DEP および OE-UFP による HO-1 および HSP-72 の mRNA レベルの上昇は NAC の添加により低下した. これらの結果は UFP の有機化学物質分画が酸化的ストレスを介して内皮細胞の機能を変化させ, 心血管系疾患を引き起こす可能性を示すものである. Hirano S, Furuyama A, Koike E, Kobayashi T (国立環境研究所, 1 環境健康研究領域, 2 PM2.5およびDEP研究プロジェクト, つくば) 大気汚染粒子による酸化ストレス Personal PM2.5 exposure and markers of oxidative stress in blood
粒子状物質が生体におよぼす影響を明らかにするため, 著者らはコペンハーゲン中央部で居住し, 学校に通う50人の学生を対象に, 季節毎に1年間に4回, 直径 2.5 _m 以下の汚染粒子 (particulate matter ≤ 2.5 _m; PM2.5) および炭素粒子 (carbon black; CB) への個体曝露の測定を2日間行い, その後, 血液サンプリングを行って, 血清蛋白, ヘモグロビンのγ-グルタミルセミアルデヒドや 2-アミノアジピンセミアルデヒド等の蛋白の酸化, 過酸化脂質, 赤血球数, 血小板数, ヘモグロビン濃度およびフィブリノーゲン濃度の測定を行った. PM2.5 への曝露濃度の中央値は個体では 16.1 mg/m3, 環境中では 9.2 _g/m3, さらに CB への個体曝露濃度は 8.1×10-6/m であった. 環境中 PM2.5 濃度と個体 PM2.5 濃度の間には正の相関が認められ (p = 0.03), 環境中 PM2.5 濃度が 10 _g/m3 上昇すると個体 PM2.5 濃度が12%上昇した. さらに, CB と個体 PM2.5 濃度の間にも正の相関が認められ (p < 0.0001), CB 曝露レベルが 1×10-5/m 上昇すると30%の個体 PM2.5 濃度の上昇が認められた. 血漿蛋白量の酸化については CB 個体曝露濃度との間に明らかな正の相関が認められたが, PM2.5 との間では相関は統計学的に有意ではなかった (p = 0.061). 女性被験者では個体 PM2.5 レベルが 10 _g/m3 上昇すると血漿中マロンアルデヒドが3.7%上昇した (p < 0.05) が, 男性ではこのような関係は認められなかった. 同様に赤血球数およびヘモグロビン濃度についても, 女性では個体 PM2.5 レベルと特異的に相関した上昇が認められた (p < 0.01). 環境中の PM2.5 レベルと全ての血液, 血漿マーカーとの間に相関は認められなかった. これらの結果は高濃度ではない粒子への曝露により末梢赤血球数の増加および酸化的ストレスが起こることを示し, また, 環境中濃度と比較して個体曝露濃度の方が, より心血管系疾患に関連した生体マーカーの変化に相関することが明らかとなった. さらに, 酸化的ストレスは動脈硬化を, 赤血球数の増加は血液粘性の増加を引き起こし, これらの変化が相まって心血管系疾患に関与するものと考えられる. Sソrensen M1, Daneshvar B2, Hansen M2, Dragsted LO2, Hertel O3, Knudsen L1, Loft S1 (1 Copenhagen 大学 保健学研究所, 2 食品安全栄養学研究所, Søborg, 3 国立環境研究所, Roskilde, Denmark) 超微粒子の毒性および炎症作用における活性酸素の関与 The role of free radicals in the toxic and inflammatory effects of four different ultrafine particle types
本報告で著者らは炭素超微粒子 (UFCB, 粒子径 14 nm; 表面積 253.9 m2/g), UFCo (20 nm; 36.9 m2/g), UFNi (20 nm; 36.2 m2/g) およびUFTi (20 nm; 49.8 m2/g) の毒性および炎症作用について in vivo および in vitro の実験系で検討を行った. これらの超微粒子 125 µg の気管内投与により UFCB および UFCo では4および18時間後に肺胞洗浄液 (BAL) 中への好中球の流入が認められ, マクロファージの炎症性蛋白-2 (MIP-2) およびγ-glutamyl trans-peptidase (GGT) の増加がそれぞれ4および18時間後に認められ, GGT の増加は UFCB および UFCo と同程度だった. UFNi では投与18時間後に好中球の流入が認められたが, MIP-2 および GGT の増加は認められなかった. また, UFTi ではいずれの項目にも変化はなかった. これらの超微粒子の投与4時間後の MIP-2 および投与18時間後の GGT の変化は, プラスミド切断実験により in vitro で測定した活性酸素産生能と一致する変化であった. UTCo, UTCB および UTNi では炎症マーカーの上昇とスーパーコイル DNA の低下が認められ, 過酸化水素の産生が示唆された. さらに, UFNi による培養肺胞マクロファージからの TNF-α の産生は抗酸化剤である N-acetylcysteine および glutathione monoethyl ester により抑制された. これらの結果は慢性閉塞性肺疾患や喘息などの既に酸化的ストレスを受けている患者では, 超微粒子によりそのストレスが増強されることを示唆する. Dick CAJ, Brown DM, Donaldson K, Stone V (Napier 大学 健康生命科学部, Edinburg, UK) 雄マウスの性成熟期における攻撃行動と血中テストステロン濃度:胎児期ビスフェノールA曝露の影響 Aggressive behavior and serum testosterone concentration during the maturation process of male mice: the effects of fetal exposure to bisphenol A
CD-1 マウスを用いて妊娠11日から妊娠17日まで, 環境中に存在し, ヒトが曝露を受ける可能性がある濃度に見合うごく低用量のビスフェノールA (体重あたり 2 ng/g または 20 ng/g) を, 一日一回与えた. 児動物は, 生後21日に母親から離乳させた. 児動物の攻撃性の評価は, 8, 12および16週齢で行った. 攻撃行動の検査をする際に使用した敵対動物には, 対照群の9ケージから無作為に15匹を選抜した. 攻撃行動の観察は, 透明なプラスチックケージに観察動物を先に入れ, 5分後に敵対動物を入れてから, 7分間行い, 観察マウスが敵対マウスの体に触れた (鼻で臭いをかぐ, 取っ組み合うなど) 時間を測った. 攻撃性を検査した動物は, 検査の一週間後に致死させ, 血液を採取し, テストステロン濃度を測定した. また, その時の体重および精巣重量を測定した. 攻撃性の指標とした接触時間は, 8週齢では,ビスフェノールAを与えた群は 2 ng/g および 20 ng/g のいずれも対照群と比較して有意に増加したが, 12週齢以降では対照群との違いはみられなかった. 精巣の相対重量(体重比)は 2 ng/g, 20 ng/g 投与群とも12週齢時に対照群より有意に低下した. 雄マウスの血中テストステロン濃度には, 対照群と比較して違いは認められなかった. 今回の実験では, 胎生期ビスフェノールA曝露によって (1) 行動 (攻撃性) に変化を来たした. (2) 発育のごく早い時期にビスフェノールAを投与すると精巣重量が低下した. (3) ビスフェノールAは, 20 ng/g より低い用量で, 精巣重量により大きな変化をもたらした (用量に依存しない変化である). しかし, この攻撃性の増加や精巣発育の抑制には, 血中テストステロン濃度の変化を伴っていなかった. Kawai K1,2, Nozaki T1, Nishikata H1,2, Aou S2,3, Takii M1,2, Kudo C1,2 (1 九州大学大学院 医学研究科 心療内科, 福岡, 2 科学技術振興事業団, 戦略的基礎研究推進事業, 川口, 3 九州大学大学院 医学研究科 統合生理学分野, 福岡) 日本人における臭素化ダイオキシンおよび臭素化ジフェニルエーテルの曝露レベル Polybrominated dibenzo-p-dixins, dibenzofurans, and diphenyl ethers in Japanese human adipose tissue
PBDEs の環境中への放出は, それらの生産, 使用, 一連の廃棄過程や PBDE 含有製品の解体などに由来している. PBDEs は脂溶性が高いため, 食物連鎖により生体内に濃縮されると考えられており, 弱いダイオキシン様作用を示す. 近年, 欧米諸国での PBDEs のヒト体内レベルは増加しているとの報告がある. 本研究は, 1970年および2000年に東京在住の40〜50歳代女性の脂肪組織中臭素化ダイオキシン (ポリ臭素化ジオキシンおよびポリ臭素化ジベンゾフラン; PBDD/Fs) および PBDEs をガスクロマトグラフィ/マススペクトロメトリーにより測定し, PBDD/Fs と PBDEs との関連を調べた. これは日本人を対象とした最初の報告である. 1970年および2000年の脂肪中 PBDD/Fs は2,3,7,8-TeBDD, 2,3,7,8,-TeBDF および2,3,4,7,8-PeBDF の3種が検出され, 1,2,3,7,8-PeBDD は検出限界以下であった. これら3種の合計はそれぞれ 3.4〜8.3 および1.9〜5.3 pg/g fat であり, ほぼ同レベルであった. また, 塩素化ダイオキシン (PCDD/Fs) レベルは2000年と比較して1970年の方が高かった. PBDEs については, 1970年では BDE-28, BDE-47, BDE-99, BDE-100 の4種が, 2000年ではこの他に BDE-153, BDE-154, BDE-183 を加えた7種が検出され, その合計はそれぞれ 6.8〜78.4 および 466〜2,753 pg/g fat であった. この結果は過去30年間の日本における BFRs 曝露量が増加していることを示唆している. 両年とも BDE-47 が全 PBDEs 中で最も多く, それぞれ56.2%および35.6%を占めていた. この2000年の日本人脂肪組織中 PBDEs レベルは, 2000年の日本や1994〜1998年のフィンランドの母乳中レベルと同等で, 1992〜1999年のドイツや米国の血中・母乳中レベルに比べ低かった. PBDD/Fs は, PBDEs や TBBPA など BFRs の熱分解により発生すると考えられており, 煤煙, 飛灰, ゴミ焼却残渣, 自動車の排気ガスなどに検出されている. 1970年および2000年ともPBDD/Fs レベルと PBDEs レベルとに相関性は認められず, 日本における両年の BFRs 使用量からはヒト脂肪中 PBDD/Fs レベルの変化を説明できなかった. これらの結果から汚染源の変遷が示唆されるが, PCDD/Fs と PBDD/Fs の環境中での動態が異なる可能性もあり, ヒトへの曝露経路は不明である. PBDD/Fs は PCDD/Fs と同等の毒性があるとされているが, 環境中の汚染実態やヒトでの曝露状況の報告は少なく, 今後の詳細な調査が期待される. Choi JW, Fujimaki S, Kitamura K, Hashimoto S, Ito H, Suzuki N, Sakai S, Morita M (国立環境研究所, つくば) ディーゼル排気吸入によるスギ花粉症の悪化には,ガス成分と微粒子の両方とも関与する Effects of the inhalation of diesel exhaust, Kanto loam dust, or diesel exhaust without particles on immune responses in mice exposed to Japanese cedar (Cryptomeria japonica) pollen
疫学研究や動物を用いた研究から, ディーゼル排気微粒子がスギ花粉症を悪化させることが知られている. 例えば, マウスを用いた実験では, スギ花粉抗原あるいは卵白アルブミンとディーゼル排気粒子を鼻腔あるいは腹腔に投与すると, 抗原特異的 IgE 抗体産生が起こったという報告がある. しかし, これがディーゼル排気微粒子曝露に限ったものであるのか, あるいは他の吸入大気汚染物質も同じ作用を有するのかについては, ほとんど報告されていない. そこで, 著者らはディーゼル排気に含まれる微粒子およびガス成分がどのようにスギ花粉症の発症に関与するのかを調べるために, ディーゼル排気, 関東ローム粉あるいは微粒子除去ディーゼル排ガスをマウスに吸入させる際に, 同時にスギ花粉も吸入させる実験を行った. なお, 関東地方の大気中に存在する細かい土埃である関東ローム粉は, ディーゼル排気微粒子に対する比較微粒子として用いた. 実験では, アレルゲン特異的免疫グロブリンE (IgE) 抗体産生を指標として, 大気汚染によるマウスの免疫応答の増強を評価した. 5週齢の雌性 BDF マウスを1群60匹, 5群に分けた. ディーゼル排気 (DE, 粒子 3.24 mg/m3;二酸化窒素 1.0 ppm) 群, 関東ローム粉 (KLD, 粒子 3.29 mg/m3;二酸化窒素 0.01 ppm) 群, 粒子除去ディーセル排気 (DEG, 粒子 0.01 mg/m3;二酸化窒素 1.1 ppm) 群および清浄空気 (花粉単独) 群の4群は, 1日16時間の曝露を1週間に5日間, 24週間行い, 曝露期間中, スギ花粉 (日本スギ花粉, 約 550,000 粒/m3) を週に2回曝露した. スギ花粉は千葉および山梨県で1995〜1998年の間に採取した. 吸入時間外は, 清浄空気中で飼育した. 残りの1群は, スギ花粉を曝露しない清浄空気対照群とした. マウス血清中のスギ花粉アレルゲン特異的 IgE 抗体価を ELISA 法で測定した. 曝露第12週および24週の DE, KLD および DEG 群の平均力価は花粉単独群よりも高かったが, 有意ではなかった. スギ花粉特異的 IgE 抗体陽性を示した動物の割合は, 曝露12週では DE 群および花粉単独群で22%, KLD 群および DEG 群で27%であり, 群間差は認められなかった. しかし, 曝露24週には, DE 群, KLD 群および DEG 群で,それぞれ73, 63および67%となり, 花粉単独群の33%よりも有意に増加した. また, スギ花粉に対するマウス頸部リンパ節細胞の増殖応答は, DE 群および KLD 群で用量依存的な増加がわずかに認められたが, DEG 群ではみられなかった. 一方, サイトカイン産生に対する影響を調べるため, 鼻洗浄液中のサイトカイン (インターフェロン-γおよびインターロイキン-4) 量を測定した. DE 群および DEG 群では, インターフェロン-γの減少とインターロイキン-4の増加がみられたが, KLD 群では認められなかった. 以上の結果から, 本実験で検討した大気汚染物質である DE, KLD および DEG は全て, マウスの IgE 抗体産生を増大させ, それぞれ類似した免疫応答調節活性を持つことが示唆された. しかしマウスでは, 花粉, 微粒子およびガス成分曝露による感作の早期には, これらは異なった機序で IgE 抗体産生を促進すると考えられた. 大気汚染物質中の微粒子はTリンパ球の活性を介して, また, ガス成分はTリンパ球にはほとんど作用せず, サイトカインネットワークの異常を誘発して, それぞれ IgE 抗体産生を促進することが明らかとなった. Maejima K1, Tamura K1, Nakajima T1, Taniguchi Y2, Saito S3, Takenaka, H4 (1 日本自動車研究所, 茨城, 2 林原生物化学研究所, 岡山, 3 東京慈恵会医科大学, DNA 医学研究所, 東京, 4 大阪医科大学 耳鼻咽喉科, 大阪) アレルゲンに繰り返し曝露したときのラット気管のコラーゲンの変化 Repeated allergen exposure changes collagen composition in airways of sensitised Brown Norway rats
喘息患者の気管の特徴の一つとして, 粘膜下組織の細胞外物質の変化と血管新生による基底膜下層の肥厚が認められ, この肥厚は, 主に沍^, 。型, 」型の各コラーゲンとフィブロネクチンおよびテネイシンの沈着の増加によるものである. さらに, 慢性の喘息患者では, 気管支の粘膜下組織に。型, 」型, 、型の各コラーゲンの沈着の増加が認められる. しかし, これらの現象がなぜ起こり, その役割が何なのかが不明であるため, それを解明する手段として動物実験モデルの作製は有用である. そこで今回, Brown Norway ラットにアレルゲンとして卵白アルブミン (OVA) 1 mgとアジュバントとして 200 _g の Al(OH)3 を第0および7日に腹腔内投与した後, 第14〜28日 (2週) または第14〜98日 (12週) まで連続的に1% OVA を吸入曝露させた. 対照には OVA の代わりに PBS を用いた. その結果, 気管の各型のコラーゲンの分布のパターンには, 対照動物とアレルゲンの曝露期間の異なる動物との間に差は認められなかった. 2週の OVA 曝露群と PBS 曝露群では, 気管に沈着したコラーゲンの量的変化および栄養血管の占める面積に差は認められなかった. 12週曝露の結果では, OVA 曝露群において, 沍^コラーゲンと、型コラーゲンの気管壁における沈着の総量が増加し, 沍^コラーゲンでは気管壁の内・外側共, 、型コラーゲンでは主に外側で増加した. 」型コラーゲンでは沈着の総量の増加は示さなかったが, 外側で増加した. 。型コラーゲンと「型コラーゲンには変化は認められなかった. さらに, 沍^コラーゲンの増加量と気管支周辺の好酸球数の増加との間に相関関係 (rs = 0.72) が認められ, 、型コラーゲンの増加と気管壁の好酸球数の間にも相関 (rs = 0.86) が認められた. しかし, 」型コラーゲンではこの関係は認められなかった. また, 全気管壁に占める栄養血管域の増加が認められた. この12週曝露で認められた各種コラーゲンの沈着は, アレルゲンの刺激によって上皮細胞や好酸球から遊離される各種の成長因子による線維芽細胞や筋線維芽細胞由来であると考えられる. このコラーゲンの沈着は, アレルゲンの継続的な感作による炎症性細胞の持続的な存在によって, 組織の繰り返しの修復およびその再生過程で産生されるもので, 沍^コラーゲンおよび「型コラーゲンなどが増加することにより, 細胞間物質の結合, 癒着を強めるなど気管壁の硬直化を増加させることにより気管の過敏反応を防御するために起こる現象であると考えられた. Palmans E, Pauwels RA, Kips JC (Ghent 大学病院 呼吸器病科, Ghent, Belgium) 職業病としてのゴム手袋アレルギー ―1995〜2001年の皮膚科情報ネットワークからの調査結果― Occupational rubber glove allergy: results of the Information Network of Departments of Dermatology (IVDK), 1995-2001
1995〜2001年の累計では, ゴム手袋接触皮膚炎は2,047名あり, パッチテストの結果, 調べた加硫促進剤のうちチウラム類化合物が合計陽性率15.1%と最も高率を示した. なかでもテトラエチルチウラムジスルフィド (TETD) が10.3%と高い陽性率を示した. 年次をおってみると1997〜2000年にかけて有意ではないがチウラム類陽性率は減少傾向を示し, また, 2001年に再び増加傾向を示したが, これも有意な変化ではなかった. ジチオカルバミン酸塩類は合計陽性率が3.4%で, 陽性となったのはほとんどの場合ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛であった. MBT 誘導体のなかではモルホリニルメルカプトベンゾチアゾールが陽性率2.5%と, MBT の2.0%より高かった. チオ尿素類は陽性率0.5%であった. 1,3-ジフェニルグアニジンは陽性率1.9%であったが, ほとんどの場合反応は弱かった. チウラム類とジチオカルバミン酸塩類の交差反応性は検査された1,975例のうち63例 (3.2%) でみられた. この場合, ジチオカルバミン酸塩類に反応した人の92.7%がチウラム類にも反応したが, 逆は21.1%であった. チウラム類のなかで TETD が最強のアレルゲンであったという結果は他の報告とも一致した. 一方, チウラム類アレルギー患者の多くは TETD のみでなく他のチウラム類にも反応したとの報告があり, 実際にゴム製造業者はチウラム類の混合物を繁用している. 調査結果では有意ではないものの2000年と比較して2001年に陽性率が増加した. 今後の推移を慎重に見守る必要がある. 陽性率の反転理由として, 多くの病院で安価な無名メーカーのゴム手袋が大量に使用され, これらの製造工程においてチウラム類による加硫促進過程が採用されているのではないかと推測される. ジチオカルバミン酸塩類と MBT 誘導体の陽性率は高くなく, 商品の成分リストではこれらの加硫促進剤の使用頻度が増しているにもかかわらず, 年次増加傾向も示されなかった. これらの化合物がゴムから遊離し難いか, 本当に感作惹起能が低いかのいずれかであろう. 最近行われたマウス局所リンパ節アッセイ (LLNA) およびマキシミゼィション試験では, これら2つの化合物グループに属する種々の物質の感作惹起能は多岐にわたっていることがわかった. 著者らの結果から, ゴムアレルゲンの構造活性関係を検討することが可能かもしれない. チウラム類のなかではテトラブチルチウラム二硫化物が, ジチオカルバミン酸塩類のなかではジブチルジチオカルバミン酸亜鉛がアレルゲン活性が低い. これらは長いあるいは大きい鎖を有しており, この構造特性が影響しているからかもしれない. Geier J1, Lessmann H1, Uter W2, Schnuch A1 (1 Göttingen 大学 皮膚科学科情報ネットワーク, 2 Erlangen-Nuremberg 大学 医療情報科学, 生物統計学, 疫学科, Erlangen, Germany) 環境化学物質と自己免疫疾患: 原因と影響 ―1995〜2001年の皮膚科情報ネットワークからの調査結果― Environmental chemicals and autoimmune disease: cause and effect
芳香族アミンおよびヒドラジン:薬物関連エリテマトーデス (DRL) の原因とされている薬物の多くは, 芳香族アミンやヒドラジンである. ヒドラジンとその誘導体は, 農工業用製品やタバコなどに含まれ, 喫煙者における全身性エリテマトーデス (SLE) の高リスクや, 硫酸ヒドラジンを扱っていた研究技術者がエリテマトーデス様の疾患を患った事例がある. タートラジン (FD&C 黄色5号) は, 多くの食物や薬剤に含まれるアゾ色素で, 喘息, 蕁麻疹, 血管性浮腫や免疫疾患の一因であると指摘されており, タートラジンを投与された患者にエリテマトーデス様の疾患が認められた. 毛髪染料基材である芳香族アミン類のパラフェニレンジアミンは, 動物実験で結合組織の異常を引き起こし, 高用量または長期間曝露では, 強皮症様障害を引き起こす. この物質とヒトの SLE の関連には論争があり, 未決着である. シリカ:シリカ塵曝露は, SLE や強皮症などの危険因子である. シリカ曝露による結合組織疾患での自己抗体発生が多数報告されており, シリカ塵の非特異的なアジュバント効果によると思われる. また, シリカによる微小血管内皮細胞や末梢血単核細胞, 皮膚線維芽細胞の活性化が, 強皮症発生に関係すると思われる. 塩化ビニル:塩化ビニル [モノマー] に曝露された人に強皮症, さらに肢端骨溶解が発生している. ヌクレオチドと結合した塩化ビニル酸化代謝物は, より高い反応性を示すことが知られている. 有機溶剤:有機溶剤である芳香族と塩素系溶剤は, 強皮症のような結合組織の疾患と, トリクロロエチレンは, 強皮症や好酸球性筋膜炎との関連が報告されている. ヘキサクロロベンゼンは, 好酸球と単核細胞の一部に炎症性の脂肪化を起こし, 1950年代には約4,000人が肝性ポリフィリン症になったことが知られている. 可塑剤:エポキシ樹脂の重合に使用する新しいタイプの可塑剤であるシクロヘキシルアミンが原因であると考えられるモルフェアと呼ばれる限局性強皮症が誘発されたとの報告がある. その他の薬剤:プロカインアミド, d-ペニシラミン, クロロプロマジンおよびイソニアジドが強皮症を起こすことが知られている. また, ベリリウム曝露により免疫関連性肺疾患になることが知られており, コカインの乱用では, 強皮症や皮膚アレルギー性血管炎のような結合組織の疾患と似たような症状を呈し, コルヒチンは筋症の原因となり, エオジンは光感受性発疹や接触皮膚炎の原因となる. 金属:一部の金属への慢性的な曝露は, ヒトおよび動物に対して免疫複合体腎疾患を引き起こす. 金は, 腎臓疾患の他, 好中球, 単球およびリンパ球の機能に影響を及ぼし, カドミウムをラットに長期投与すると膜性糸球体腎炎を引き起こし, これも免疫系複合体によるものである. また, マウスでは, 抗核抗体が産生されるとの報告もある. 水銀は, マクロファージ, 多形核白血球およびT-リンパ球に影響を及ぼすことが動物実験において報告されており, 高感受性ラットでは, さまざまな免疫複合体が糸球体腎炎を引き起こすこと, マウスおよびラットにおいて認められるこれらの自己抗原は, ラミニン1, フィブラリンまたは核ヒストンであることが示唆されている. 水銀は, 体内タンパクのメルカプト基に作用してタンパクの分子そして抗原特性を修飾する. プリスタンは, しばしば天然油中の夾雑物として認められ, 近交系マウスに対して自己抗体を産生しエリテマトーデス様疾患や腎疾患を引き起こす. これはまた, 免疫系を非特異的に活性化する. これら多くの化学物質は, ヒトおよび動物の免疫系にさまざまな方法で影響することが多くの研究によって明らかにされてきたが, その主な作用機序は大きく分けて以下の6種を挙げることが出来る. 1. 薬物がポリクローナルなB細胞を活性化することによって自己抗体を産生し, 抗原特異的な免疫反応が誘発される. 2. 薬物が, 免疫または他の細胞に直接毒性を示すことにより免疫機能を障害するか細胞内物質が放出され, それに対する自己抗体が産生される. 3. 薬物と細胞成分間に相似構造があるとき, おそらく薬物と生体分子の抗原決定の共有化によって交差反応が起る. 4. 薬物が遺伝子活性を変更する調節因子に直接作用する. 環境物質によってT細胞の DNA メチル化を妨害することが報告されており, これによって自己攻撃T細胞や自己免疫疾患が誘発される. 5. 薬物が自己タンパクと結合することによって抗原構造と機能を変化させ, 自己免疫反応を誘導する潜在性抗原決定基が顕在化する. 6. 薬物がフリーラジカルを発生させることによって炎症性反応を起こす. なお, 今後の自己免疫疾患調査に関する課題は, 自己免疫疾患をより記述的でより正確に同定および定義すること, また各症例が環境物質の曝露に関連した疾患である可能性が示唆された場合は, その関連性について疫学的, 医学的さらに学術学的に調査研究する必要があり, さらに, その基準や分類には常に新しい情報を追加, 見直しおよび再評価をしていく必要がある. Hess EV (Cincinnati 大学 医学部 免疫部門, Cincinnati, USA) |
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