食品・薬品安全性研究ニュース第55号目次 |
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上海在住男性の魚介類摂食と心筋梗塞死の関係 Fish and shellfish consumption in relation to death from myocardial infarction among men in Shanghai, China
食習慣は, 食品45品目について過去12か月間に摂取した頻度を調査した. この記憶による摂取量の信頼性は, 24時間食餌摂取調査を抜きとりで行って確認した. 魚介類は, 鮮魚, 塩漬け魚, 甲殻類の3品目で, 標準重量 (骨重量を引いたもの) は, それぞれ 46.8 g, 25.9 g, 43.3 g とし, 一日の魚介類平均摂取量は, 魚介類3品目の摂取頻度と標準重量の積をあわせて算出した. 魚介類からの n-3 脂肪酸1日の摂取量は, 1日の各魚介類品目摂取量とそれぞれの n-3 脂肪酸含有量 (鮮魚 0.57 g / 100 g, 塩漬け 0.44 g / 100 g, 甲殻類 0.36 g / 100 g) を掛けて算出した. 調査参加者のうち, 魚介類の摂取量を週 50 g 以下と答えたのは21% (3,789人) であり, 60% (2,936人) の人は週 200 g (約4食分) 以上魚介類を食べていた. 全対象者の1週間の平均摂取量は, 129.1 g であった. 12年間の追跡調査中に2,134人が死亡し, その死因は9% (187人) が虚血性心臓病, 2% (480人) が卒中, 41% (865人) が癌であった. 1998年1月の時点で113人の急性心筋梗塞による死亡が認められた. 分析結果を年齢, 総エネルギー摂取量, 心血管系疾患の危険因子で訂正したところ, 魚介類を週 200 g 以上摂取する男性は, 摂取量が 50 g 以下の男性と比べ, 致死性急性心筋梗塞の相対リスクが 0.41 (95% CI: 0.22-0.78) であった. また, 週 50 g 以上摂取する人は, それ以下の人と比べ, 相対リスクは 0.56 (95% CI: 0.37-0.85) であった. 魚介類由来 n-3 脂肪酸の平均摂取量は, 0.66 g /週と予測され, n-3 脂肪酸の摂取量が最も低い方からの男性20% (< 0.27 g /週) と比べ, それ以上の男性は, 致死性心筋梗塞のリスクが有意に低かった (相対リスク = 0.55, 95% CI: 0.37-0.83). 追跡調査で急性心筋梗塞以外の虚血性心疾患による死亡が74件認められたが, 魚介類または n-3 脂肪酸摂取のいずれとも関連は認められなかった. 全死因による死亡率は, 1週間の魚介類摂取量 50 g 以下の群と比較して, その他の群では20%の低減が認められた (相対リスク = 0.79, 95% CI: 0.69-0.91). これらのデータは, 上海在住の中高年男性では魚介類の摂取が, 致死性心筋梗塞リスクを低下させることを示している. Yuan J-M1, Ross RK1, Gao Y-T2, Yu MC1 (1州立南 California 大学 予防医学科/Keck 医学部 Norris 総合がんセンター, Los Angeles, CA, USA,2上海がん研究所 疫学部, 上海, 中国) 薬草医薬品による重大な精神神経系副作用 Serious psychiatric and neurological adverse effects of herbal medicines ― a systematic review
薬草成分に起因すると考えられる副作用:原因となった薬草と起こった副作用の主なものは, オタネニンジン (チョウセンニンジン, 主成分tripertin, saponin, 不眠, 性器出血, 乳房痛), ユーカリ (eucalyptin, quercetin, チアノーゼ, 譫妄), トケイソウ (alkaloids, flavonoids, 嘔気, 眠気, 頻脈), チョウセンアサガオ (tropane alkaloids, 失調, 霧視, 見当識障害, 副交感神経遮断症状), カンゾウ (glycyrrhizic acid, 鉱質コルチコイド過剰症状), マオウ (ephedrine, 不安, 錯乱, 不眠, 精神異常), イチョウ (ginkgolides, flavonoids, 胃腸症状, アレルギー, 頭痛), オトギリソウ(hypericin, 胃腸症状, 疲労感, 不安) 等であった. 混入物, 汚染物によると考えられる副作用:薬草製剤が重金属等に汚染されている場合や意図的に活性物質が混入されている場合にそれらによる健康障害がおこっている. 事例としては, 漢方複合製剤に砒素が混入していて, 3歳の女児に脳浮腫, 腎不全が生じた例, 同じく「漢方」製剤で癲癇に効能が謳ってあるものがフェニトイン, カルバマゼピンを含んでおり, 服用した33歳女性が昏睡に陥った例, 同様に糖尿病効果を謳った漢方薬にグリベンクラミドが配合されており, 56歳男性が低血糖昏睡に陥った例, など多数が収録してある. 汚染物重金属としては, 砒素, 鉛, 水銀, タリウムがあり, 意図的に混入された (としか考えられない) 薬物には抗癲癇薬, 抗糖尿病薬のほか, サリチル酸メチル, ステロイド剤等があった. 薬草医薬と治療薬との相互作用:これも多数の事例報告があり, あるものは同効薬であるための相加効果であるが, 薬物代謝に対する影響を介する相互作用もある. 相互作用の原因薬としては, betel nuts (ビンロウジ), ginkgo (イチョウ), ginseng (ニンジン) がよく見られる. Kava (カワカワ;ポリネシア産コショウ属植物) にはドパミン拮抗作用があり, levodopa 服用中の75歳のパーキンソン病婦人に症状を悪化させた報告がある. St. John's wort (オトギリソウ) が paroxetine と相互作用を起こしてセロトニン症状を誘発する事例があった. 結論として, 薬草医薬は決して副作用のない薬品ではなく, ほぼ定常的に事故の報告がある. この実態をさらに明らかにし, 適切な教育指導を行う必要がある. Ernst E (Exeter & Plymouth 大学, Peninsula 医学校, 補完医学科, UK) 磁場により松果体からのメラトニン分泌が撹乱されるか? −職業的50 Hz磁場曝露の影響の研究− Magnetic fields and the melatonin hypothesis : a study of workers chronically exposed to 50-Hz magnetic fields
磁場長期被曝者15名と対照者15名を対象に, 明期10時間, 暗期14時間の秋に調査した. 対象者は, 31〜47歳の男性で, 急性および慢性疾患が無く, 規則的な睡眠習慣を有し, 喫煙および服薬をしておらず, 7:00〜23:00 が活動期の人であった. また, 一般的臨床検査で健康状態, 内分泌機能および血液細胞が正常範囲であることを確認した. 磁場長期被曝者は, 高電圧施設作業現場の従業員で, この作業現場の近くの宿舎に居住しており, 昼夜を通して磁場に曝露さされていた. 15名のうち10名が7〜20年間被曝しており, 5名が1〜4年間被曝していた. 対照者15名は職場で磁場に曝露されていないホワイトカラーから選ばれた. 環境の磁場レベルは線量計で 40〜800 Hz の周波数帯を1週間計測した. メラトニン分泌に関する検査のため, 20:00〜8:00 に1時間毎に採血し, この間の尿を採取した. 血中メラトニン濃度およびメラトニン代謝物である尿中6-スルファトキシメラトニン濃度を測定した. 長期被曝者の環境の磁場レベルは, 個人毎の1週間の等比中項で 0.1〜2.6 _T, 15名の平均が 0.72 _T, そのうち昼間の平均が 0.64 _T, 夜間の平均が 0.82 _T であった. 対照者の環境の磁場レベルは, 個人毎の1週間の等比中項は 0.004〜0.092 _T, 15名の平均が 0.04 _T, 昼夜いずれも 0.04 _T であった. 血中メラトニン濃度の 20:00〜8:00 の日内変動をみると, 長期被曝者群と対象者群の間で差異はみられず, 20:00〜22:00 は低レベルで推移し, 以後上昇し, 2:00〜5:00 に最高値に達し, 以後下降した. 20:00〜8:00 の尿中6-スルファトキシメラトニン濃度も両群で差異はみられなかった. 血中メラトニン濃度について, 長期被曝者のうち 0.3 _T を超える環境にいた9名のみを対象者群と比較しても差異はみられなかった. 著者らの以前の研究では, 20〜30歳の健康な男性を 50 Hz (10 _T) 環境に9時間置いても血中メラトニンと尿中6-スルファトキシメラトニンは変化しなかった. 今回, 職業上長期に被曝する人を対象にして, 慢性曝露の影響を調べたが, 磁場によるメラトニン分泌およびその日内変動への影響は少なくとも40歳前後の男性には認められなかった. Touitou Y1, Lambrozo J2, Camus F1, Charbuy H1 (1PitiéSalpêtrière 医学部 生化学・分子生物科, Paris, 2 Electricité de France/Gaz de France, Service des Etudes Médicales, Paris, France) 米国少女の血中鉛レベルと性成熟:第3回全米健康栄養調査, 1988-1994 Blood lead levels and sexual maturation in U.S. girls: The third national health and nutrition examination survey, 1988-1994
本調査は, 第3回全米健康栄養調査 (1988-1994) の第二次性徴の発現および血中鉛レベルデータを用いた. 対象は, 8〜16歳の Tanner の発達度分類に基づく陰毛, 乳房発達の情報がある1,706人の少女で, そのうち初潮の情報があるのは10歳以上の1,235人の少女であった. 性成熟のマーカーは, Tanner ステージを用いた陰毛, 乳房の発達の医師による診断および初潮の自己申告とし, Tanner ステージ2 (陰毛:軽く着色し, 柔らかいまばらな直毛, 乳房:こぶ状に隆起した乳房と乳頭, 着色し, 広がり隆起した乳輪) に達した少女のみを対象とした. 血中鉛濃度 (0.7-21.7 _g/dL) は, 0.7-2.0, 2.1-4.9, 5.0-21.7 _g/dL の3レベルに分けた. 一般的に, 性成熟と血中鉛レベルの関係は, 負の相関にあり, この関係は若い少女で特に顕著であった. 年齢で訂正し, 加重した Cochran-Mantel Haenszel カイ2乗検定では, 陰毛発達がステージ2に達した少女数の割合が, 血中鉛濃度の3レベル間で有意な違いを示した. 血中鉛レベルと初潮時期は, 加重分析で僅かに有意な関連が認められたが, 乳房発達は, 血中鉛レベル間で違いは認められなかった. 平均血中鉛濃度は一般的に思春期に達していない少女のほうが高かった. 年齢で訂正した二元配置 ANOVA 検定で, 陰毛の発達がステージ2に達した少女と達していない少女では, 平均血中鉛濃度に有意な差が認められた. 初潮に関しては, 加重 ANOVA 検定が平均濃度に僅かに有意な違いを示した. しかし, 乳房発達状態による群間の血中鉛濃度の差は, 有意ではなかった. 本調査結果は, 鉛曝露によって性成熟の発現遅延を示した動物実験と一致している. 現在, 米国厚生省疾病管理・予防センター (CDC) は, 高血中鉛濃度を 10 _g/dL 以上と定義している. しかし, 本研究で鉛曝露は血中濃度 10 _g/dL 以下でも少女の春機発動の遅延と関連することが示された. Wu T1, Buck GM2, Mendola P3 (1 東 Tennessee 州立大学, 公衆衛生/家庭医療学科, Johnson City, TN, 2 米国国立衛生研究所, 国立小児保健・人間発達研究所, 疫学/統計学/予防研究部門, Rockville, MD, 3 米国環境保護局, 国立衛生環境影響研究所, Research Triangle Park, NC, USA) 内分泌撹乱化学物質評価のための試験法の確認作業に関する科学的な問題 Scientific issues associated with the validation of in vitro and in vivo methods for assessing endocrine disrupting chemicals
アメリカ EDSTAC の主導で検討された試験法については, 現在, その妥当性について確認作業が実施されている. In vitro 試験法の中でも, ホルモンとの構造活性相関や受容体発現の試験系は, 試験管内という限界はあるが, 信頼できる有用な手段であることが判明している. 生体試験法の中で, エストロゲン活性をみる齧歯類を用いた子宮肥大試験については, その妥当性を確認する初期段階の作業が終了しているが, 感度の改良を行うという課題がまだ残っている. 同じように, 抗アンドロゲン活性をみるハーシュバーガー試験も OECD によって確認作業が行われている 2.齧歯類の内分泌撹乱試験にみられる変動と不確定性の原因 化学物質の内分泌撹乱性を調べる試験は, 多くの変動要因により, 複雑になっている. 植物エストロゲンであるゲニステインによる子宮肥大試験の反応は, 投与経路を変えると劇的に異なる. 試験の感度の高低を認識することも重要である. Gray らは, 抗アンドロゲン作用を有するビンクロゾリンを母ラットに投与して, 生まれてきた子ラットへの影響を評価する指標について, 肛門生殖突起間距離, 精子の生産, 精巣の位置異常の順に変化が起こりやすいことを報告している. 3.餌と内分泌撹乱 思春期開始時期の個人差の原因として, 食物があることは早くから認識されていた. しかし, 齧歯類による内分泌撹乱試験で, 餌が変動要因であることが, 最近になってやっと認識された. Odum らは, 幼若ラットを用いた子宮肥大試験やラットの性成熟を調べる試験で, 飼料によってエストロゲン活性が異なることを証明した. Nagel らは, Purina 5001 餌を使用した場合, RM1 餌を用いた試験で確認された低用量のビスフェノールAのマウス前立腺に及ぼす影響は, 見られなかったと報告した. Purina 5001 餌は, RM1 餌に比べて植物エストロゲンを豊富に含んでいた. 餌の選択は, 内分泌撹乱試験の重要な変動要因の一つであることは明らかである. 4.内分泌撹乱試験における内因的器官重量変動 内分泌撹乱試験法の評価の指標について, その動物に本来起るべき内因的な変動があることを充分把握していないことによる問題がある. Lee がノニルフェノールの投与時期を変えて SD ラットの前立腺に及ぼす影響を検討した際, ノニルフェノール投与群は概ね対照群に比べて前立腺重量の比体重値が低下したが, 生後13〜30日に投与した群だけは, 低下はみられなかったと報告した. しかし, 生後13〜30日に投与試験の対照群の値は, 原因は不明だが, 他の時期の投与試験の対照群に比べて有意に低下していた. 同じ様な事例は, Sharpe らによっても報告されている. 低用量のオクチルフェノールやブチルベンジルフタレートによりラットで精巣重量の低下が誘発されたが, その後, Ashby らによってブチルベンジルフタレート陰性の報告がされ, オクチルフェノールについても多世代試験において低用量および高用量で陰性であったとの結果が出ている. 化学物質が誘発する内分泌撹乱作用の結論を出す前に, 対照群のデータを詳細に確認することが信頼できる結論を導くために必要である. 5.動物の系統の影響 化学物質の内分泌活性の試験のあるものでは, 異なる試験機関で, 異なる動物系統, 異なる時期, 異なる研究者の間で, 驚くべき一致をみることがある. しかし, 内分泌撹乱データには, 系統に特異的な事例も知られている. エストラジオールとビスフェノールAによるプロラクチン血症は, F344 ラットでは起るが, SD ラットでは起らない. ビスフェノールAは F344 ラットの膣上皮細胞の DNA 合成を誘発するが, SD ラットではそれが起こらない. しかし, 胎児期にビスフェノールA曝露を受けた児の膣に起る変化は SD ラットでも起る. 膣開口日と子宮内位置の関係についても, 野生マウスでは報告されているが, CF1 マウスでは, それらの関係はないとされている. 同じ CF1 マウスを用いたビスフェノールAおよびジエチルスチルベステロールの前立腺への影響についても, 影響が出る場合と出ない場合がある. これは, 動物の入手先の違いに起因していると考えられる. 6.低用量影響 もし, 現在の毒性学的無影響量より桁違いに低い濃度でエストロゲンが影響し得るという観察が一般現象であるならば, 化学物質毒性試験法は最初から設計し直さなければならない. 前述した通り, オクチルフェノールやブチルベンジルフタレートの低用量による変化は, 否定的な見解が出されているが, 最も注目されているのは Nagel らのビスフェノールAと, Vom Saal らのジエチルスチルベストロールの実験結果であろう. ビスフェノールAのマウス前立腺への影響は, 前立腺重量の増加, 前立腺アンドロゲン受容体の増加, そして生後1日における前立腺突起形成の増加の3つに集約される. マウス前立腺重量の増加は,ジエチルスチルベストロールでも報告されている.ジエチルスチルベストロールでは,幼若マウスの子宮重量を増加させるが,その用量は前立腺重量を増加させる量の2倍である.一方,ビスフェノールAは,前立腺重量を増加させる量の1万倍を投与しても子宮重量を増加させることはできない.したがって,ビスフェノールAとジエチルスチルベストロールの低用量での前立腺への影響は,同質なものとは考えられない.また, Cagen ら, 著者 (Ashby) らは, ビスフェノールAの低用量の影響を SD ラット, Wistar ラットで確認することができなかった. このように, 一見同じような実験で, 結果が再現できないのはなぜかを解明できない限り, これらの物質の低用量によるヒトへのリスクを論じることはできない. 7.総合的結論 内分泌撹乱物質の曝露によるヒトへのリスク評価を確信をもって行う前に, 各種の試験法とデータ解釈, 特に餌の影響の問題, 試験系に内在する変動, 試験に用いる動物の系統や種類の影響および内分泌撹乱における用量反応関係の諸問題を解決しなければならない. 内分泌活性のある化学物質によって, 野生動物やヒトに及ぶ真の危険を識別できるようにするためには, 性急な結論を出さないようにすること, データを豊富にし, それらを統合する作業を増進することが必要である. Ashby J (Syngenta 毒性学中央研究所, Alderley Park, Cheshire, UK) プロラミンスーパーファミリー植物タンパクと食物アレルギー Plant protein families and their relationships to food allergy
植物タンパク質の分類は, その研究の黎明期においては溶解性に基づいて行なわれていた. しかし, 近年になると, タンパク質の分類は機能あるいは推定された機能に注目して行なわれる様になった. シロイヌナズナやイネにおけるプロテオーム解析による分類がその好例である. 植物タンパクのうちもっとも広範囲に分布し, 食物アレルギーにも深く関与しているものの1つに, プロラミンスーパーファミリーがある. プロラミンスーパーファミリーに属するタンパクは, 分子量 15,000 Da 以下の含硫低分子量タンパクで, 8個あるいはそれ以上のシステイン残基を持ち, ジスルフィド結合によって安定化されたαヘリックスによる折りたたまれた束状構造を持っている. プロラミンスーパーファミリーのタンパク質は, 2つに大別される. 第1のグループには, ハイドロキシプロリンが豊富な糖タンパク質である細胞壁構造タンパク質等が含まれ, 第2のグループには穀類種子中の貯留タンパク質が多く, 双子葉植物種子の 2S 蓄積アルブミン, αアミラーゼ/トリプシンインヒビター, ピューロインドリン, 穀物軟化タンパク質, 大豆疎水タンパク質, 非特異的脂質輸送タンパク質が含まれる. 異なるファミリー間ではジスルフィド結合のパターンも異なるものと推定される. スーパーファミリーの名前の由来となったプロラミンはαアミラーゼ/トリプシンインヒビターファミリーの一員で, 穀物の貯蔵タンパク質であり, 水に難溶, アルコール/水混合液に可溶で, しばしばプロリンおよびグルタミンが多い異常なアミノ酸組成を持つ事で知られている. シロイヌナズナの遺伝子の解析から, プロラミンスーパーファミリーのタンパク質は, 最も大きなファミリーの1つで, 食物アレルギーの原因となるものが多く存在することが明らかになった. 食物アレルギー調査資源プログラムのデータベース (http://www.allergenonline.com/) によれば, このスーパーファミリーにおける既知の食物アレルゲンは98にも及び, 例えば小麦プロラミンは, アトピー性皮膚炎や運動誘発性アナフィラキシーの原因となる. 以上のことから現在では, プロラミンスーパーファミリータンパク質は植物性食物アレルギーの原因として最も重要なものと考えられている. Shewry PR1, Beaudoin F1, Jenkins J2, Griffiths-Jones S3, Mills EN2 (1 Bristol 大学, 農学部, Long Ashton 研究ステーション, Long Ashton, Bristol, 2 Norwich Research Park, 食品研究所, Colney, Norwich, 3 Wellcome Trust Genome Campus, Hinxton, Cambridge, UK) ディーゼル排気粒子は肺炎への抵抗性を低下する? Suppressive effects of diesel exhaust particles on cytokine release from human and murine alveolar macrophages
著者らは DEP 吸入が Ams のサイトカイン産生を抑制して生体防御機構を障害するという仮説をもとに本研究を行った. マウスから採取した Ams 初代培養細胞に DEP 0〜10 _g/mL を加えて24時間後の上清中の TNF-α, IL-6 および IL-8 を ELISA 法で測定したところ, TNF-αおよび IL-6 産生の抑制が認めらた. しかし, 炭素粒子ではこのような抑制は認められず, 100 _g/mL では逆に TNF-α の産生増加が認められた. この抑制は DEP のメタノール抽出物でも認められたことから, 可溶成分の作用と考えられた. また, 用いた濃度範囲の DEP には細胞毒性は認められなかった. DEP はマウス Ams においては, リポポリサッカロイド (LPS) およびインターフェロン-γによる TNF-αおよびIL-6 産生を濃度依存的に抑制し, ヒト Ams においても LPS 刺激による TNF-α, IL-6 および IL-8 産生を抑制した. 活性酸素消去酵素である SOD の前投与はマウス Ams において DEP による IL-6 産生の抑制を著しく回復した. 著者らは以前に, メタノール洗浄した DEP では活性酸素産生が持続しないことを報告しており, 本報告で認められた DEP とその可溶成分による活性酸素産生は可溶成分の有機化学物質と金属によるものと考えられたが, この活性酸素がどのようにサイトカイン産生を抑制したかは不明である. しかしながら, このような DEP の Ams に対する作用は炎症性反応を阻害して肺炎や気管支炎などの呼吸器疾患を引き起こすものと考えられた. Amakawa K1, Terashima T2, Matsuzaki T1, Matsumaru A2, Sagai M3, Yamguchi K1 (1 慶応大学 医学部 内科, 東京, 2 東京歯科大学市川病院 内科, 市川, 千葉, 3 国立環境研究所 大気汚染物質健康影響研究チーム, つくば, 茨城) ディーゼル排気吸入によるスギ花粉症の悪化には,ガス成分と微粒子の両方とも関与する Effects of the inhalation of diesel exhaust, Kanto loam dust, or diesel exhaust without particles on immune responses in mice exposed to Japanese cedar (Cryptomeria japonica) pollen
疫学研究や動物を用いた研究から, ディーゼル排気微粒子がスギ花粉症を悪化させることが知られている. 例えば, マウスを用いた実験では, スギ花粉抗原あるいは卵白アルブミンとディーゼル排気粒子を鼻腔あるいは腹腔に投与すると, 抗原特異的 IgE 抗体産生が起こったという報告がある. しかし, これがディーゼル排気微粒子曝露に限ったものであるのか, あるいは他の吸入大気汚染物質も同じ作用を有するのかについては, ほとんど報告されていない. そこで, 著者らはディーゼル排気に含まれる微粒子およびガス成分がどのようにスギ花粉症の発症に関与するのかを調べるために, ディーゼル排気, 関東ローム粉あるいは微粒子除去ディーゼル排ガスをマウスに吸入させる際に, 同時にスギ花粉も吸入させる実験を行った. なお, 関東地方の大気中に存在する細かい土埃である関東ローム粉は, ディーゼル排気微粒子に対する比較微粒子として用いた. 実験では, アレルゲン特異的免疫グロブリンE (IgE) 抗体産生を指標として, 大気汚染によるマウスの免疫応答の増強を評価した. 5週齢の雌性 BDF マウスを1群60匹, 5群に分けた. ディーゼル排気 (DE, 粒子 3.24 mg/m3;二酸化窒素 1.0 ppm) 群, 関東ローム粉 (KLD, 粒子 3.29 mg/m3;二酸化窒素 0.01 ppm) 群, 粒子除去ディーセル排気 (DEG, 粒子 0.01 mg/m3;二酸化窒素 1.1 ppm) 群および清浄空気 (花粉単独) 群の4群は, 1日16時間の曝露を1週間に5日間, 24週間行い, 曝露期間中, スギ花粉 (日本スギ花粉, 約 550,000 粒/m3) を週に2回曝露した. スギ花粉は千葉および山梨県で1995〜1998年の間に採取した. 吸入時間外は, 清浄空気中で飼育した. 残りの1群は, スギ花粉を曝露しない清浄空気対照群とした. マウス血清中のスギ花粉アレルゲン特異的 IgE 抗体価を ELISA 法で測定した. 曝露第12週および24週の DE, KLD および DEG 群の平均力価は花粉単独群よりも高かったが, 有意ではなかった. スギ花粉特異的 IgE 抗体陽性を示した動物の割合は, 曝露12週では DE 群および花粉単独群で22%, KLD 群および DEG 群で27%であり, 群間差は認められなかった. しかし, 曝露24週には, DE 群, KLD 群および DEG 群で,それぞれ73, 63および67%となり, 花粉単独群の33%よりも有意に増加した. また, スギ花粉に対するマウス頸部リンパ節細胞の増殖応答は, DE 群および KLD 群で用量依存的な増加がわずかに認められたが, DEG 群ではみられなかった. 一方, サイトカイン産生に対する影響を調べるため, 鼻洗浄液中のサイトカイン (インターフェロン-γおよびインターロイキン-4) 量を測定した. DE 群および DEG 群では, インターフェロン-γの減少とインターロイキン-4の増加がみられたが, KLD 群では認められなかった. 以上の結果から, 本実験で検討した大気汚染物質である DE, KLD および DEG は全て, マウスの IgE 抗体産生を増大させ, それぞれ類似した免疫応答調節活性を持つことが示唆された. しかしマウスでは, 花粉, 微粒子およびガス成分曝露による感作の早期には, これらは異なった機序で IgE 抗体産生を促進すると考えられた. 大気汚染物質中の微粒子はTリンパ球の活性を介して, また, ガス成分はTリンパ球にはほとんど作用せず, サイトカインネットワークの異常を誘発して, それぞれ IgE 抗体産生を促進することが明らかとなった. Maejima K1, Tamura K1, Nakajima T1, Taniguchi Y2, Saito S3, Takenaka, H4 (1 日本自動車研究所, 茨城, 2 林原生物化学研究所, 岡山, 3 東京慈恵会医科大学, DNA 医学研究所, 東京, 4 大阪医科大学 耳鼻咽喉科, 大阪) タバコのタール生産量と上部消化管発癌のリスク:イタリアとスイスでの症例対照研究 Cigarette tar yield and risk of upper digestive tract cancers: case-control studies from Italy and Switzerland
第1の研究は, 中北部イタリア, スイスにおける1992〜1999年の749例 (77歳以下の男子634例, 女子115例, 中央値58歳) の口腔および咽頭癌患者と1,770例の入院患者対照例 (78歳以下の男子1,252例, 女子518例, 中央値58歳), 第2の研究では395例 (77歳以下の男子351例, 女子44例, 中央値60歳) の組織学的に扁平上皮癌と確認された食道癌患者と1,066例の入院患者対照例 (75歳以下の男子875例, 女子191例, 中央値60歳) について各種の条件 ―年齢, 性, 生活環境, 教育年限, アルコール摂取量など ― を含めて, 非喫煙者, 喫煙を止めた人 (前喫煙者) および現喫煙者, タバコの銘柄, 種類 (紙巻タバコ, 葉巻, パイプなど), 1日の喫煙量, 喫煙開始年齢, 喫煙期間, 喫煙を止めてからの期間および最近6か月間に吸ったタバコの種類などについて調査し解析を行った. また, 紙巻タバコのタール生産量に関しては, 20 mg 以上, 19〜10 mg および 10 mg 以下の高, 中, 低タールの3段階に分類した. その結果, 紙巻タバコのタール産生量と上部消化管腫瘍の間には直接の関連性があり, 高タールタバコと比較して低タールタバコではリスクの低減が認められた. 紙巻タバコを吸う現喫煙者と非喫煙者とを比較した場合, 口腔,咽頭癌に対する OR は 6.8, 食道癌では 5.1, 1日に25本以上吸う現喫煙者では 12.3 と 7.9 を示した. さらに30年以上喫煙している現喫煙者の OR は口腔, 咽頭癌では 7.7 および食道癌では 5.5 と高い値を示した. パイプおよび葉巻を吸う現喫煙者の OR はそれぞれ 6.6 および 12.6 であった. 最も長期間喫煙した紙巻タバコの銘柄に基づいて, 前喫煙者と現喫煙者について非喫煙者と比較した場合, 前喫煙者の口腔, 咽頭癌に対する中および低タール群の OR は 4.2, 高タール群では 5.9, 食道癌ではともに 3.5 であった. さらに最近6か月間における紙巻タバコの口腔, 咽頭癌に対する OR は低タールタバコでは 3.8, 中タールタバコでは 7.1, 食道癌では低タールタバコでは 2.4, 中タールタバコでは 5.4 を示した. 前喫煙者における高タール群とそれ以下では, 口腔, 咽頭癌に対する OR は 1.6, 食道癌では 1.1, 現喫煙者ではそれぞれ 1.6 と 1.3 を示した. さらに最近6か月における中・高タール群と低タール群では口腔, 咽頭癌に対する OR は 1.9, 食道癌に対しては 1.8 であった. 本研究で, 最近の紙巻タバコのタール生産量が 10 mg 以下とそれ以上では上部消化管発癌に対する OR には約2倍の差が認められた. しかし, 低タールタバコにおいても上部消化管腫瘍に対するリスクは依然として高い値を示しており, 肺癌や心臓血管疾患との関連性も認められていることから, 上部消化管腫瘍を予防するのに一番大切なことは禁煙をすることである. Gallus S1, Altieri A1, Bosetti C1, Franceschi S2, Levi F3, Negri E1, Dal Maso L4, Conti E5, Zambon P6, La Vecchia C1,7 (1 "Mario Negri" 薬学研究所, Milan, Italy; 2 国際がん研究機関, Lyon Cedex, France; 3 Lausanne 大学, 予防社会医学教室, Vaudois 州腫瘍登録, Switzerland, 4 腫瘍参照センター, Pordenone, 5 "Regina Elena" 腫瘍研究所疫学腫瘍発生学科, Rome, 6 Venetia 州腫瘍登録, 腫瘍疫学科, Padua, 7 Milano 大学, 医学統計学生体計測研究所, Milan, Italy) |
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